フランスの教育は日本とまったく違う! 義務教育は3歳から&小学校で飛び級・留年は当たり前。家庭環境や公立・私立に関わらず教育格差をゼロに。その結果は?
飛び級・留年はありがたい制度?!
日本でも義務教育は無料です。しかし残念ながら実際は、経済的、地理的不公平が当たり前になっていることは明らか。都会の裕福な家庭の子どもたちは、小学校、中学校から私立の学校を受験します。その準備のために特別な塾に通うことも、もはや大前提です。日本の文部科学省が2022年に公表した「令和3年度子どもの学習費調査の結果」によると、小学校に子どもを通学させている保護者が1年間に支払った補助学習費(習い事は別)は、公立校通学の場合12万円、私立校通学の場合37.8万円でした。 さて、冒頭の飛び級と留年に戻ります。単刀直入に言うと、フランスの学校教育は経済的・地理的不公平を否定する、だからこそ飛び級と留年がある。 想像してみてください、自分の住む地域の学校に通いながら、優秀な子どもは飛び級してどんどん伸びてゆくことができ、学びに時間がかかる子どもはもう1年同じ学年を繰り返して、自分のペースで学んでゆける環境を。優秀な生徒だけを集めた進学校に通わせなくとも、あるいは特別なサポートのある学校を探して通学させなくとも、地域の学校に通い続けさえすればその子どもにあった教育が提供される、ということ。元フランス文化大臣のフルール・ペルラン氏は、韓国人孤児としてフランス家庭の養子になり、その後飛び級を繰り返して政治家になりました。こういったストーリーは多々あります。 この「地域の学校に通いさえすれば十分」という安心は、子ども本人にとってはもちろんのこと、たとえばシングルマザーにとっても大きな助けになります。筆者自身が当事者なので言及すると、親にとって、自分の経済力が至らないばかりに我が子に満足な教育を与えることができない、という事態ほど、情けなく辛いものはないでしょう。日本のシングルマザーの話を聞くたびに、フランスにいる自分はこの悩みがないだけ幸運だ、と思ったものでした。 では子どもたちの方は、飛び級と留年をどう感じているか? フランスの小中学生に質問したところ、「クラスに1人くらいは飛び級、留年の生徒がいて、特別なことではない」「ちゃんと理解していないことをそのままにして、先に進むことの方が困る」などなどの回答。日本的に「これまで一緒にいた友達と進級できないことは辛い、恥ずかしい」という意見はまったくなく、普通のことなので心配ご無用という雰囲気でした。 少し話がずれますが、軽度の障がいのある子ども2人の母(日本人)で、夫(フランス人)を事故で失った知人がいます。彼女は小さな子どもたちを、異国の地フランスで女手一つで育てることを選びました。決断の理由は、「弱者に手を差し伸べる社会だから」。彼女の子どもたちは父親の死後もずっと、それまでどおり地域の学校に通い続けました。
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