パナソニック、ガンバ大阪のデータ活用支援 スポーツはDXの新鉱脈
2月に開幕した2024年のサッカーJリーグ。ガンバ大阪のホームスタジアムであるパナソニックスタジアム吹田で開かれる試合にも、連日多くのファンが押し寄せる。 【関連画像】ファンの熱量を決済データで補足。スワローズペイの仕組み 同スタジアムはガンバ大阪を中心とする任意団体が、民間から寄付金を募り16年に開場した。公共施設を民間資金で設立するという異例の取り組みが話題を呼んだ。初年度の平均来場者数は1試合当たり約2万5000人と好調な滑り出しだった。 ところが目新しさが失われたためか、翌年には来場者数が早くも減少に転じる。1試合当たり平均で1000人ほど、年間では約1万7000人も減少するペースだった。そんな折に支援の手を差し伸べたのがパナソニックホールディングス傘下のパナソニックインフォメーションシステムズ(IS)だ。 ●複雑な条件で観客を絞れるように 同社は主に企業向けのデジタルトランスフォーメーション(DX)支援を手掛ける。水族館や美術館など向けのPOSシステムやチケット発券システムに強みを持つ。 Jリーグは「JリーグID」という共通の会員サービスを運営しており、試合チケットやグッズを購入するとこのIDにひも付けられる。JリーグIDを通じてガンバ大阪も観客データを収集してはいたが、それを生かせていない状態だったという。 そこでパナソニックISは観客データを簡単にふるい分けできる独自システムを開発し、ガンバ大阪に提供した。ある年の来場者を基準に設定すると、その人たちが前後2年間ずつで来場したかどうかを分析できる仕組みだ。 観客の来場データの分析を進めたところ、「昨シーズン来場したが今シーズンは来場しなかった」という観客が想定以上に多かったことが判明。シーズン間の離脱を防止するためメールプロモーションに力を入れる方針に切り替え、「昨年の開幕戦に来場した人向け」や「リピーターファン向け」などに分けて文面を工夫した。 さらにデータからファンが多く住む地域を詳細に割り出し、ポイントを絞って宣伝チラシを配布する取り組みなどを進めた結果、来場者数が回復。データ活用を本格化させた19年には1試合当たり前年比2割増となる約2万8000人が来場した。新型コロナウイルス禍で一時的に落ち込んだが、24年の来場者数は19年水準に戻りつつある。 パナソニックISデータ&アナリティクスソリューション本部でマーケティングや経営データの分析を担当する小柳祐貴氏は「今後はネット配信の視聴履歴などとも連携させ、ファンを優良顧客化するための接点づくりに貢献していく」と話している。