パナソニック、ガンバ大阪のデータ活用支援 スポーツはDXの新鉱脈
ファンの熱量を決済で可視化
マーケティング効率化だけでなく、決済も重要な収益ポイントになる。 東京きらぼしフィナンシャルグループ傘下のきらぼしテック(東京・港)は4月、東京ヤクルトスワローズを運営するヤクルト球団と電子決済サービスの「Swallows Pay(スワローズペイ)」の提供を始めた。公式オンラインショップのほか、コンビニや大手スーパーといった全国約270万カ所の「QUICPay(クイックペイ)」加盟店で使用できる。 「大手の競合のようにユーザー全員にポイントを配るのではなく、特定の個人に還元するのが我々の戦略だ。大手と勝負する気は全くない」ときらぼしテックの柳生清貴社長は話す。 決済サービスはPayPayや楽天ペイなどがしのぎを削るレッドオーシャンだ。きらぼしテックは、主な収入源となる決済手数料を球団などと分け合うビジネスモデルで競合と異なる路線を歩む。 スワローズペイでチケット購入決済などを促すことで、年間に数十万円を投じるような熱量の高いファンを会員データとひも付けられる。球場の特別席に招待したり、限定グッズを贈ったりする還元策を提供できるようになる。球場まで足を運んだファンに近くの飲食店のクーポン券を配る取り組みなども検討中だ。 「ビジネスにスポーツを組み合わせると、これまでにない価値を提供できる。ファンを含めて関係者全員がウィンウィンになる仕組みを作りたい」と柳生社長は意気込む。 電子決済事業では後発で規模も小さいきらぼしテックだが、スワローズの知名度もあり想定を超える反響が寄せられているという。同様の決済システムを導入したいと、他のスポーツ団体からも声がかかり始めた。 三菱UFJリサーチ&コンサルティングの調査によると、23年時点で野球日本代表のファンは約2890万人、サッカー日本代表のファンは約2681万人に達し、22年比でそれぞれ3割、2割増加した。スタジアム観戦やグッズ購入などの支出も増加しており、市場は拡大中だ。 日本のスポーツ業界には「金もうけ主義」を避ける風潮が長く続いていた。だが、クラブに経営意識が根付き始めたことであらゆる業務の効率化が始まっている。急速に進むDX化の中に多くの商機が残されている。
朝香 湧