「僕は戦争に行きたくない」ウクライナが直面する“2つのリスク”
ロシアによるウクライナ侵攻は、まもなく3年を迎える。北朝鮮が自国の兵士を派遣するなどロシアとの軍事協力を深めるなか、アメリカのトランプ次期政権発足を前に戦闘が激化している。“2つのリスク”に直面するウクライナの今を取材した。 (NNNロンドン支局 鈴木あづさ)
■「ああ、鳴ってるね」…戦争が日常に
2024年12月初旬、ウクライナの首都・キーウで取材していた私は、けたたましいサイレンの音に部屋を走り出た。すれ違った人に「シェルターに行かないんですか!?」と聞くと、「何?」と聞き返された。「ほら、サイレン!」と外を指さすと、「ああ、鳴ってるね」と落ち着き払っている。 「早くシェルターに行かないと!」とあわてふためく私に、彼は窓の外を指さした。見ると、往来を行く人の様子は普段と変わらない。足を速めることもなく、何事もなかったかのように淡々と歩いている。「この国では、もう戦争が日常になっているのだ」と思い知らされる。 ちょうど1年半前に訪れた、町の中心にある「独立広場」。折からの細かいみぞれにそぼぬれながら、無数のウクライナ国旗が寒そうに立っている。旗の1本1本が戦死者を表しているという。前回訪れた時とは比べものにならない本数の旗が所狭しと並ぶ光景に、戦慄(せんりつ)を覚える。
■「勝っても負けても…」母親の涙
手を合わせ、目を閉じていた女性に話を聞いた。スベトラーナさんは、29歳の息子ダニールさんをウクライナ東部ドネツク州の戦場で亡くしたという。ダニールさんは前線から5キロ離れた集落でドローン攻撃によって命を奪われた。「1日も早く戦争が終わってほしいと願っています。どちらが勝っても負けても、もうそんなことはどうでもいいんです。このおびただしい数の旗を見てください。息子のような犠牲者をこれ以上、1人も出さないでほしいんです」と涙ながらに語った。
■“トランプ2.0”にウクライナは…
25年2月24日には侵攻開始から3年となる。ロシア軍はウクライナ東部への攻勢を強め、対するウクライナ軍もロシア領内を越境攻撃している。北朝鮮兵士が戦闘に参加し、アメリカ政府はウクライナに提供した長い射程のミサイル「ATACMS」による攻撃を許可。ロシア側は最新型の中距離弾道ミサイル「オレシニク」を発射した。極超音速、多弾頭型で迎撃するのは非常に難しいとされる。とどまるところを知らない戦闘の激化に、ウクライナは疲弊しきっている。