「僕は戦争に行きたくない」ウクライナが直面する“2つのリスク”
なかでも顕著なのが、兵力不足だ。ロシア側は受刑者を釈放したり、外国の志願兵を高収入で雇ったりするほか、北朝鮮兵士の参戦を受け入れた。今後、北朝鮮兵は10万人まで増えるとの予測もでている。 対するウクライナ側の兵力不足は明らかだ。フランスのルモンド紙は、イギリスとフランス両国がウクライナへの派兵を議論していると報じた。北朝鮮の派兵で、NATO=北大西洋条約機構が「強い懸念」を共同声明で発するなど、ヨーロッパは一気に結束した。 ただ、懸念材料となっているのが“またトラ”である。ウクライナにおける戦争を「24時間以内に終わらせる」と選挙中に豪語していたトランプ次期大統領は、ウクライナへの軍事支援には消極的とされる。ロシア特使に指名されたキース・ケロッグ氏は、現在の戦線に基づいて戦闘を停止させ、ウクライナとロシアを交渉のテーブルにつかせるという考えを示している。トランプ次期政権発足まで1か月を切った。少しでも停戦を有利な状況に持ち込もうと攻撃を激化させているプーチン氏にどう向き合うのか。 日本の外交筋は「トランプ次期政権が早期の終戦をうたっている以上、25年にはロシアとウクライナとの間で和平協議が始まるのではないか。ただし、ウクライナはNATOへの加入と、ロシアによる侵略が再び起こらないようにすることを主張していて、一方のロシアは現在、占領した地域を手放す気はないことから、そう簡単にはまとまらないだろう」と厳しい見方を示した。NATO側もロシアとの戦争に巻き込まれたくないと、ウクライナの加入については慎重な意見が根強い。
■「僕は戦争に行きたくない」…親子の祈り
キーウ市内に住む15歳のマキシム君と母親のオリガさんを取材した際、マキシム君は「僕はできれば戦争には行きたくない」と言った。隣で聞いていた母親は目を真っ赤にして「戦争で夫や息子を亡くした女性をたくさん知っているので、こんなことを言うべきではないのはわかっています。でも、やはり息子には戦争に行ってほしくありません。息子が徴兵年齢を迎えるまでに戦争が終わることを心から願っています」と語った。母親は7時間も続く停電のなか、ろうそくの明かりで息子のためにパスタを作っていた。 戦闘は激化の一途をたどっている。だが、ウクライナ東部や南部のロシア占領地を残したまま停戦するなど、ロシアの意に沿う形になれば、力によるウクライナ領土の占領を認めてしまうことになる。北朝鮮兵が実戦経験を積み、ロシアから軍事的な協力を得ることになれば、日本を含む東アジアの安全保障にも影響が及びかねない。 一時的な停戦だけでなく、停戦後、ロシアによる侵攻が再び起こらないようにするには一体どうすべきか。トランプ次期政権は、私たちは、親子の祈りにどうこたえるのか。戦争終結に向け、国際社会の知恵と胆力が問われている。