悲願の本番 公演延期シアターキューブリック葛藤の1年
孤立感、不安抱く人々の生きていく活力になれれば
稽古中から本番、千秋楽までコロナ対策を徹底すると緑川は説明する。 「生の空間でお客様の前に立つのが演劇なので抗原検査はもちろん受けましたが、稽古中も常に検温はじめ体調管理、最初から最後までマスクを着用しての稽古、こまめに休憩をとって換気をする。本番はそれにくわえてお客様も一緒に空間をつくるので、観劇の1週間前から体調に気をつけてくださいとアナウンスをして、現場では検温を実施し、劇場内での会話も極力お控えいただく。そういう安心感がエンターテインメントを楽しむ一番重要なところになるのかな、と。そういうところでお客様と一緒に空間をつくっていきたいです」 眞実は難しい状況下でこれからの俳優生活の展望を述べる。 「私は役者というポジションでそもそも舞台がないと生きていけません。ありきたりですが健康を第一に気をつけて。同業者の仕事を観に行ったときコロナ対策を徹底的にやってお客様もみんなが協力している様子を目の当たりにしまして、あらためて舞台はお客様も一緒にやるものなんだなって。これから役者としての努力を磨いていくのはもちろんですが、人とのつながりが原点なのでそこを大事にしていきたいし、舞台で感謝を伝えたい、恩返しできるようにやめずにこれからも続けていきたいです」 眞実が初めて観た舞台は、小学校の演劇鑑賞会で観た劇団四季の『エルコスの祈り』。引っ込み思案だった眞実は、舞台上で役者たちがそれぞれの気持ちを温かく伝え合っている様を見て感動し『思いを伝えられる人になりたいなと思い』役者を目指したという。 緑川、眞実だけではなく、作品に携わるすべての人々の思いが今回の上演に結実する。 「孤立したり、不安を感じて過ごされている方も多いと思います。ライブエンターテインメントの価値はこれからますます上がっていくと思っています。生の空間で楽しむものって全身の毛穴が喜ぶような、そういう感覚を思い出していただき、生きていく活力にしていただければと思います」 (写真と文:志和浩司)