井上尚弥が10・31米ラスべガスでモロニーと無観客防衛戦が決定…敵は最強挑戦者だけでなく新型コロナ禍の未知数要素
紆余曲折の末、トップランク社がモンスターの米国本格デビューの相手にふさわしい相手として用意した挑戦者がモロニーである。 モロニーは、井上がグラスゴーで2ラウンドで倒したエマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ)にWBSSの準々決勝で判定で敗れている相手。3段論法で行くと井上が負けるはずがなく、常に強い相手を求める井上のモチベーションが心配だったが、むしろ逆だった。 「より気を引き締めないといけない。カシメロより穴のない選手。どう突破口を見いだしていかないといけないか、カシメロより対策を考えないといけない選手」 井上は、2018年10月にフロリダ州オーランドで行われた、そのロドリゲス対モロニーの試合を現地で直接観戦していた。 「タフでスタミナもあり、技術も高い選手。総合的にはカシメロよりも高いと思った。残り1か月。対策を練りながらやっていかないと危ない相手だと思う」 モロニーは21勝(18KO)1敗の高いKO率を誇るオーソドックススタイルのボクサーファイターで、2018年5月には、井上と対戦経験もある元WBA世界Sフライ級王者の河野公平をホームであるオーストラリアのリングにむかえ、6回にTKO勝利している。河野が棄権したものだが、至近距離の右フックでぐらつかせて戦意喪失に追い込み、河野が引退を決意するに至った。 1-2の僅差判定で敗れたロドリゲス戦は、左ジャブを軸に足を使い、接近戦をうまく織り込み相手を消耗させる引き出しの多さを見せた。カシメロのようにぶんぶん振り回してくる迫力や一発で試合を決めるまでのパンチ力はないが、ボクサーとしての完成度は上。 ロドリゲス戦後は、4連勝中。しかも6月にレオナルド・パエス(メキシコ)に7回TKO勝ちしており、井上より試合勘はある。大橋会長も「怖さはないが隙がなくカシメロよりやり辛い」と警戒心を強めた。井上は、試合展開を「KO決着なら序盤から中盤。ただ後半にもつれこむと精神的な戦いになる」と想定した。 井上に不安材料がないわけではない。不安というより未知なる領域の敵だ。 ひとつは1年のブランク。だが、「1年もブランクがある感覚ではない。そこは問題ない」と井上。拳の手術で2015年にも1年試合のできなかった経験があるが、「あのときはトレーニングができなかった。あのときの感覚とは全然違う」という。