井上尚弥が10・31米ラスべガスでモロニーと無観客防衛戦が決定…敵は最強挑戦者だけでなく新型コロナ禍の未知数要素
もうひとつは新型コロナ禍の米国事情だ。渡米予定は、「試合の2週間前」という予定でいるが、ラスベガスのあるネバダ州は、まだ規制が緩和されておらず、最悪の場合、2週間の自主隔離が義務づけられる可能性があり、そうなれば調整が難しくなる。「まだ何もわからない」(大橋会長)という状況だが、そのあたりも想定して父で専属トレーナーの真吾氏は、「向こうでは体重調整だけで済むくらいまで国内で仕上げていく」と計画を練る。 さらに無観客という“敵“が待ち受ける。試合は“バブル”と称されるMGMグランド内のカンファレンスセンターに作られた特別な無観客リングで行われる予定。いわゆるスタジオマッチだ。井上も「ラスベガスでやれるのは嬉しいが、そこがひっかかる」という。 「2万人の中で試合をやって次は無観客。あそこまでのボクシングを無観客の会場でやりきれるのか。集中力であったり仮にピンチになったときの精神の保ち方も。ゴングが鳴ってから感じるんじゃなく、しっかりイメージして臨みたい」 ドネア戦は、“格闘技の殿堂“さいたまスーパーアリーナに2万人以上の観客が集まる中行われ、観客の熱気と応援が、あの名勝負を生んだ。観客の声援がピンチで力になり、ポテンシャルを最大限に引き出してくれた。だが、今回は、その見えない力に期待はできない。 7月にいとこの井上浩樹のタイトル戦を後楽園でサポートした際、無観客の雰囲気を味わったが、「アマチュアの試合とも違う」という違和感を抱いた。 現在は「いかに集中して普段通りのパフォーマンスを出せるか。未知だけどそこがポイントとなる。イメージトレーニングしかない」と、ジム内にかかる音楽を消して練習を行うなど、無観客を想定した練習もスタートさせている。 またこれまでのように海外からスパーリングパートナーも呼べない。新型コロナ禍での準備に未知な部分は多いが、井上は、「自分がどう仕上がるかだけ」という揺るがぬ決意がある。