“学びへの好奇心”が起点「人と人とが繋がる幸福なまち」福井県福井市の取り組み[FRaU]
高野さんがまちづくりと出会ったのは、JICA(国際協力機構)の職員として。11年の在職期間中には、途上国の国づくりや地域づくりに携わった。その過程で、「まちは誰かの思いや地道な活動の末に出来上がるものだと気付かされた」と高野さん。面白さと同時に、その仕事の重大さを痛感し、当事者として自分が帰属意識を持つまちの活動にも携わりたいと考えたそう。仕事を続けながらも、2011年頃から地元福井で活動をはじめた。 「まず『COMMUNITY TRAVEL GUIDE 福井人』という本を作りました。地域の魅力的な人を紹介するという内容で、人選から取材、執筆や広報まですべて市民参加型で進め、総勢900人ほどの方が関わってくれて。これだけ多くの人が一緒に面白がってくれることに希望を感じましたね」 さらなるターニングポイントは、JICA職員として2014年からの3年間、ブータン王国へ駐在したこと。ブータンはGNP(国民総生産)よりもGNH(国民総幸福量)を尊重する国。“精神的な幸せ”を大切にする国づくりに携わる中で、今に繋がる気づきがあった。 「ブータンの人たちの幸福度を支える要素に、社会的な繋がりがあることを実感しました。道で人とすれ違えば、知らない人同士でも目を合わせて挨拶をしますし、週末には野外ダーツをする名目で人々が集まって一日中ずっとコミュニケーションをとっている。しがらみではなく、繋がることの利に重きが置かれる豊かさには、感銘を受けましたね」
体験プログラムを起点に 風景を少しずつ変えていく
各国での経験を携え、2020年にJICAを退職。福井でのまちづくりの研究と活動に専念するに至った。そしてこれまでの学びを活かして始まったのがふくまち大学。開校から1年、面白い反響や変化も生まれてきている。 「象徴的なのは『まちのコミュニティナース学科』です。病院ではなく地域の中で周囲の手助けをする“コミュニティナース”をしている方が手を挙げてはじまった、座学と地域実習からなる講座です。過去2回の講座を経て、修了した方が自ら考え方を広めたり、プロジェクトをスタートさせたりしていて、活動が広がっている。今後が楽しみです」