牛窪恵「恋愛結婚で苦労した母を見て育った。〈結婚には恋愛が必要〉はわずか60年の歴史の結婚観。老後のために共同生活者を作ろう」
◆生活防衛のための人脈作りを 夫との暮らしで1番楽しいのは、たわいない話をしながら一緒に食事をしているときですね。テレビのニュースを見ながら、「なんなの?あの政治家は!」と憤慨したり、「今日は、仕事でこんなことがあった」との報告やグチを言い合ったり。もともと私は大の寂しがり屋なので、ひとり暮らしが苦手だったんです。私も夫も阪神ファンなので、タイガース戦をテレビや球場で一緒に見て応援できる利点もあります。ただ、私は興奮するとヤジを飛ばすので、球場で夫に注意されることも多いんですが。 いまの時代、必ずしも「結婚」という形(婚姻届)にこだわる必要はないでしょう。ただ、トシをとればとるほど、老親の介護など、自分だけでは背負いきれない問題が増えてくる。家事や住まいのメンテナンスなども、自分ひとりだけで行うのは次第にしんどくなってきます。そんなとき、一緒に問題解決してくれる「共同生活者」がいれば生活防衛にもつながります。 結婚は大きな賭けですが、柔軟に相手を受け止め、互いに軌道修正し合えれば、大きなヒビが入るリスクは減らせます。大切なのは、素の自分をさらして建設的に本音を言い合える相手かどうかではないでしょうか。もっとも、その見極めが難しいからこそ「まずは結婚せず、同棲してみよう」と考え、結局は別れに至る若者も一定数いるのだと思いますが。 いずれにせよ、女性は男性より平均寿命が6~7年長いので、今、結婚している方でも、夫に先立たれて「おひとりさま」になる確率が圧倒的に高い。75歳までに亡くなる女性は1割程度ですが、男性では4人に1人(女性の約2.5倍)もいるからです。そんな女性も、頼りになる友人や知人が近くにいれば安心。ある時期から近所に住むなどして、お互いに助け合える人脈作りを早めに心がけておいた方がいいでしょう。 子育てという夫婦共通のタスクを終えた後、50代、60代で熟年離婚をしたり、卒婚という道を選んだりする人(おもに女性)も増えています。「人生のセカンドステージ」を幸せに歩むための決断ですから、周囲がとやかく言う問題ではありません。ただ、ひとりに戻った際に、いざというときに頼れる人脈を作っておくことは重要です。人はひとりでは生きられない――そう考えると、結婚というシステムも意外と悪くないのではないかと思います。 (構成=内山靖子)
牛窪恵
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