牛窪恵「恋愛結婚で苦労した母を見て育った。〈結婚には恋愛が必要〉はわずか60年の歴史の結婚観。老後のために共同生活者を作ろう」
◆恋愛感情は3年程度で冷める 実は脳科学的にも、ドーパミンが多く放出される興奮系の恋愛と、セロトニンやオキシトシンが放出される癒し系の結婚は、「混ぜるな危険」だと分かってきました。ドーパミンは脳にストレスがかかりすぎるからこそ、長続きしないようにできている。人類学者のヘレン・フィッシャー氏は、「恋愛感情は3年程度で冷める」ことを、脳科学的に立証しました。 そこまで分かってきたにも関わらず、世の中には「結婚するには恋愛が必要」という価値観がいまだにはびこっています。いまどきの若者にとって、それではハードルが高すぎる。恋愛のストレスや「重さ」を知る彼らにとって、しかも恋愛シミュレーションゲームなど代替コンテンツが豊富な現代にあって、現実の恋愛に、リスクを顧みず自ら飛び込んでいくのは非常に面倒くさいし怖いこと。 でも、その恋愛というハードルを乗り越えないと結婚はできないと思っているので、恋愛力や恋愛意欲の低い自分には無理だと、多くが諦めてしまうのです。 内閣府や国の第三者機関が実施した調査によれば「いずれは結婚したい」と答える若者は8割以上もいるのに、20~39歳の未婚男女で「一度も誰とも交際したことがない」人が、女性の約4人に1人、男性では約4割にも達しています。ただでさえ経済的に苦しいうえに、結婚の前に恋愛という大きな壁が立ちはだかっているせいで未婚化が進んでしまう。さらに、日本では籍を入れずに子どもを産む女性(いわゆる婚外子)が少ないので、婚姻率が下がることで、少子化もどんどん進んでいるのだと言えるでしょう。
◆変わるべきは大人世代 私は決して、「結婚しないと幸せになれない」と考えているわけではありません。私の親は熟年離婚しましたし、それぞれの人生ですから、生涯「おひとりさま」でもその人が幸せならまったく問題ない。でも、潜在意識の中では8割以上の若者が「結婚したい」と思っているにも関わらず、実際に結婚に至らないのは、実にもったいない話だと思います。 そんな若者たちが、もっと気軽に結婚できる社会を作っていくためには、まずは私たち大人が結婚観をアップデートする必要があるのです。昭和から令和へ、時代の流れとともに世の中のスタイルや価値観も劇的に変わっているわけですから、令和の時代にマッチした結婚のあり方を親世代も知っておかねばなりません。 私が考える、令和にふさわしい結婚の形は「共創結婚」です。ドキドキするような大恋愛を経て、理想に燃えて結婚するのではなく、「子どもを育てる」「地に足がついた暮らしを創り上げていく」という目的を達成していくための「共同生活者」としてふさわしいパートナーを選び、日々の暮らしを共に地道に創造していく、合理的なスタイルです。すでに実践しているカップルもいますが、その一例として、セックスを(排卵日以外は)ほとんどせず、男女というより人対人として友情を育む「友達結婚」というスタイルも、これから増えていくでしょう。平日は別々に暮らして、週末だけ一緒に過ごすような「別居婚」が理想という若者も少なくありません。 そもそも、「結婚には恋愛が必要」という概念は昭和の高度経済成長期以降に広まった、たかだか60年程度の歴史しかない結婚観です。それまでは、お見合い結婚や職場の上司、親戚や近所の人の紹介で、つまり誰かに後押しされて異性と出会い、結婚に至るのが一般的でした。それなのに、2000年代に入ると「自己責任」論が言われ、「勝手に恋愛して、結婚相手を探していいよ」「その代わり、自己責任だよ」と放っておかれているのです。それならば、親世代も未婚者たちに「まだ結婚しないの?」など暗黙のプレッシャーをかけることなく、「最初から完璧な相手じゃなくても、共に少しずつ成長(共創)できる相手を探せばいいんだよ」「無理に恋愛しなくても、友達結婚もアリだよね」など、結婚の多様化に向けて舵を切って欲しい。変わるべきは私たち大人のほうなのです。
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