50歳以上の採用者は72人 ロレアルはなぜ年齢差別(エイジズム)に反対するのか
フランスのロレアルでは昨年、50歳以上で入社した人は72人に上った。ただ、ロレアルは最近になって急に採用方針を変えたわけではない。1970年代から年齢問題に取り組み、今回のプログラムはそれらを時代に合わせて前進させた。 ロレアルはほかの企業にも、エイジズムへの理解と50歳以上の社員の育成や支援を促すため、出版社「バイヤール」グループが設立したシンクタンク「クルブ・ランドワ」と協力して「憲章」を作った。 憲章では、年齢に関連した固定観念と闘うことや、あらゆる年齢層の社員のスキル開発をサポートするなど10の約束を打ち出した。昨年までにアクサやエールフランス、ミシュランなど、47社が賛同して署名し、今年中に100社になる見込みだ。署名した企業内の最良の事例集を共有し、互いにいかせるようにするという。 クルブ・ランドワの創設者シビル・ルメールさんは、2035年までに欧州の人口の50%が45歳以上になると指摘し、「フランスは想定よりも早く高齢化が進んでいる。企業はいま雇用している人により長く働いてもらう必要が出てくる。より長く働き続けられるように、国や企業はあらゆる行動をとらなければならない」。 フランスでは日本のような定年制度はないが、多くの人が年金を満額受給できるようになると退職する。ところが昨年、年金受給の開始年齢を引き上げることが決まると、国民から激しい反発の声が上がった。 そうしたなかで、待遇に配慮するとはいえ、働く期間を延ばすことにもつながり得ることにベテラン社員たちは納得するのだろうか。ルメールさんは「企業がすべての利害関係者、つまり社員や労働組合との対話を維持し、高齢化する労働力に適応することが重要だ」と言う。 そして日本にも参加を呼びかける。「日仏の文化の違いはあるにせよ、急速に高齢化しているのは同じ。互いに多くのことを学べるはず」
朝日新聞社