50歳以上の採用者は72人 ロレアルはなぜ年齢差別(エイジズム)に反対するのか
社内の年齢差別、なくす取り組み
ロレアルは現在、社内のエイジズムをなくそうと転換を試みる。その一つが「全世代のために」という社内プログラムの導入だ。このプログラムはあらゆる世代が共に働くことを促し、何歳になってもキャリアを通じて雇用される能力を高めることを主な目的としている。 プログラムを具現化した社員の一人が、クリストフ・ワトキンスさん(58)だ。正式に入社したのは54歳。「自分の子どもと同年代の25~30歳の若者たちと一緒に仕事をすることが多い」と話す。 モバイルアプリの専門家で、以前は米国で会社を経営していた。2016年、知人を通して、コンサルタントとして仕事を引き受けた。店舗の展開やデジタル決済システムの契約などの仕事をした後、社員になった。現在は全ブランドのデジタル化と小売りの決済システムを担当する。ワトキンスさんは、自分のようなデジタルやネットに詳しい年配社員にはデジタルに関する歴史的背景を若者に教える役割があると言う。 イザベル・カニュラコステさん(60)は40歳で入社した。弁護士で入社時は雇用・労働法のリーガル・ディレクターを務めた。その後、彼女は自ら希望して別の法務や人事を担当。現在は倫理問題全般を担当する部署のディレクターで、そこに異動したのは58歳だった。「私は常に学ぶことができるポジションに就けた。何歳であろうと他のことがしたいと望めば、会社はその機会を与えてくれる。それがこの会社にとどまる理由の一つ」 このプログラムは、全世代にとって魅力的な企業となるように入社から退職までサポートするとうたう。フランスで2022年に始まり、米国や中国でも採り入れられている。「年齢が上がるにつれ、適応力がなくなる」「デジタル変革についていけない」といった年齢に関する固定観念や偏見を解消するためのeラーニングも採り入れ、退職後は同窓会を通じて会社とつながりを持つことができるとしている。 ルグランさんは「フランスのロレアルでは社員の30%が50歳以上で、ロレアルグループ全体では15%が50歳以上だ。50歳を過ぎてもなお、多くのエネルギー、意欲、可能性のある人たちが何百万人もいる。私たちにとって重要なのは、そうした人たちをできる限りサポートすることです」と話す。