ドイツ、急激に増加する難民向けに「無料オンライン大学」Kiron university
ドイツでは2015年だけで約80万〜100万人の難民庇護申請者の流入が見込まれている。特にシリア内戦の影響は大きい。そしてドイツに入国後、難民認定が受けられるまではしばらく時間がかかるが、それまでの期間をインターネットを利用してeラーニングで学習ができるようにと、2014年夏にドイツのベルリンでKiron大学が起ち上げられた。現在150人以上のボランティアが準備を進めている。
■難民向けに無料でオンラインで大学のコースを提供
ドイツに来たばかりでドイツ語ができない難民も多いためKiron大学では全ての授業を英語で展開する。今後はフランス語、アラビアでも授業を提供していきたいと考えている。
Kiron大学は3年間のコースが提供されており、1年目は語学や一般教養科目を学び、2年目からは工学、コンピューターサイエンス、経済学、建築学、異文化研究の5つの専攻から1つを選び、3年目は提携先のドイツだけでなく欧州の通常の20以上の大学に正規の学生として編入できるようにするカリキュラムを予定している。 またハーバード、スタンフォード、MITなどアメリカの大学が既にオンラインで提供している英語の講座やドイツの提携大学の講義、ドイツ語習得のための講座を受講できるようにする。ドイツ外務省は、語学学習についてはゲーテインスティチュートにも協力を呼びかけようとしている。既に世界60カ国の国籍を持つ学生15,000人の応募者があり、そのほとんどがシリア人である。
■クラウドファンディングで募金を集める
ドイツ外務省もKiron大学の支援を検討しているほか、ドイツ大学学長会議(HRK)や国内9つの技術大学TU9をはじめ、全国の77の大学と提携を話し合いを行っている。アーヘン工科大学が2015年9月に提携大学として名乗りを上げている。
現在150人以上のボランティアが参加して準備が進められているが、大学の運営には莫大な費用がかかる。政府などの支援の他にもクラウドファンディングを通じて募金を呼びかけている。学生1,000人分の学費にあたる120万ユーロ(約1億6,200万円)を集めようとしている。1か月で122人分の学費に相当する146,000ユーロ(約2,000万円)を集めた。
■難民の80%はスマートフォン所有
難民の中にはドイツで大学教育を受けることを希望する人も多い。しかし正規に大学に入学するにはドイツの高校卒業と同等の学力やドイツ語力を証明する必要がある。また大学には定員の制限があるため簡単に入学できない。そのような状況で難民がドイツの通常の大学に入学することは非常にハードルが高い。そのため無料でオンラインで受講できるKiron大学への期待は高い。ドイツテレコムによると、ドイツにいる難民の80%がスマートフォンを所有している。オンラインであれば、いつでもどこにいても勉強ができる。
ドイツには現在、毎週2万人の移民・難民が来ている。ドイツにおいて無料で高等教育を受けることが出来れば社会に早く溶け込め、就労機会も広がると同時に犯罪減少することも期待されている。
▼クラウドファンディングを呼びかけるKiron大学の動画