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北朝鮮で12人立て続けに死亡…「新型コロナか」病院が疑惑の行動

高英起デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト
金正恩氏(朝鮮中央通信)

北朝鮮の東北部・咸鏡北道(ハムギョンブクト)の清津市で、肺炎とインフルエンザの症状を見せて治療を受けていた患者12人がわずか2日の間に死亡。さらに、病院側の「疑惑の行動」が市民らの恐怖心を煽っていると、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が伝えている。

公開処刑も

今のところ、北朝鮮で新型コロナウイルスの感染者が出たとする公式発表はないが、同国内からは感染者発生の情報を当局が隠ぺいしているのとの話も漏れ伝わっている。

RFAの現地消息筋は、「今月9日から2日間で、清津市浦項(ポハン)区域にある道人民病院で12人の患者が死亡したことを受け、市の防疫当局と住民が緊張している。死亡した患者たちは、今月初めから道人民病院に入院して治療を受けてきた。しかし、道内で一番大きな病院の治療も実らなかった。病院側は遺体を火葬し、遺族には遺骨を返還した」としている。

またこの消息筋によれば、「普通、わが国の病院が患者の遺体を火葬することはない。今回も患者の遺族は葬式を出すために遺体を返すよう求めたが、病院はインフルエンザウイルスの拡散を防ぐためとしてこれを拒否。病院施設全体の消毒を何度も繰り返した」という。

この行動を、市民が不振に思わないはずはない。

経済制裁の影響によって経済難が深刻化している北朝鮮では、当局が公開処刑などの恐怖政治で治安を維持しようとするなど、社会に張り詰めた空気が漂い始めていた。

(参考記事:女性芸能人たちを「失禁」させた金正恩氏の残酷ショー

そんな中で訪れた新型コロナウイルスの脅威に、市民はただでさえ緊張を強めているのだ。

防疫体制が脆弱な北朝鮮は、国内で感染者が拡散するのと同じくらい、その情報が国内で広がるのを恐れている。実際、今月8日には拷問や公開処刑を担当する秘密警察の保衛部が、新型コロナウイルスに関わる国内情報を外国に流した女性らを逮捕している。

死者が続出して国民の不安が爆発するような事態になれば、金正恩体制の危機に発展しかねない。

仮に感染者が発生しなくとも、ウイルス侵入対策として中国との貿易を停止してからすでに1カ月になる。昨年の農業が惨憺たるありさまだったことを考えると、物資の欠乏も心配だ。

デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)『金正恩核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)『北朝鮮ポップスの世界』(共著)(花伝社)など。YouTube「高英起チャンネル」でも独自情報を発信中。

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