見解アメリカの世論にトランプ大統領になれば中東の紛争が「早期に終わる」という観測があるようですが、現下の戦闘が終わるめどは全く立っていないのが実情です。「抵抗の枢軸」陣営が抗戦を続ける理由はなくなっていませんし、大統領が誰であれアメリカの政策は「イスラエルの気が済むまでやらせ、その間時間稼ぎをする」以外のものはないからです。アメリカの政局がらみで何か期限を切って成果を上げようとするならば、敵方に「それよりも長期間粘る」という非常にらくちんな達成目標を与えることになります。トランプ大統領以下が前回の任期の時と同様に振る舞うのならば戦闘の促進要因になるでしょうし、「戦争を終わらせる」がアメリカが戦争のための負担をしないという意味ならば、こちらの方面でそれを実現することはできないのではないでしょうか。
コメンテータープロフィール
新潟県出身。早稲田大学教育学部 卒(1998年)、上智大学で博士号(地域研究)取得(2011年)。著書に『現代シリアの部族と政治・社会 : ユーフラテス河沿岸地域・ジャジーラ地域の部族の政治・社会的役割分析』三元社、『「イスラーム国」がわかる45のキーワード』明石書店、『「テロとの戦い」との闘い あるいはイスラーム過激派の変貌』東京外国語大学出版会、『シリア紛争と民兵』晃洋書房など。
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