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園田寿

園田寿

認証済み

甲南大学名誉教授、弁護士

報告

補足罪名が麻薬取締法(麻向法)違反に変更になった背景には、次のような理論的な問題があります。 客観的には覚醒剤(最高10年の懲役)である錠剤を、本人は「MDMA(麻薬)だ」(最高7年の懲役)と思っていたので、そこに主観と客観の不一致(錯誤)があります。このような場合の処理について刑法38条2項は、「重い罪に当たるべき行為をしたのに、行為の時にその重い罪に当たることとなる事実を知らなかった者は、その重い罪によって処断することはできない。」としています。 したがって、本件では覚醒剤で処罰することはできませんが、覚醒剤とMDMAはともに重大な規制薬物であるという類似性があるところから、MDMAの違法性の限度で両罪は実質的に重なり合っていると理解されています(判例)。そこで被告人には麻向法違反の罪が成立することになります。ただし、没収については客観的な物質名に従って覚醒剤取締法が根拠となります。

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コメンテータープロフィール

園田寿

甲南大学名誉教授、弁護士

1952年生まれ。甲南大学名誉教授、弁護士、元甲南大学法科大学院教授、元関西大学法学部教授。専門は刑事法。ネットワーク犯罪、児童ポルノ規制、薬物規制などを研究。主著に『情報社会と刑法』(2011年成文堂、単著)、『改正児童ポルノ禁止法を考える』(2014年日本評論社、共編著)、『エロスと「わいせつ」のあいだ』(2016年朝日新書、共著)など。Yahoo!ニュース個人「10周年オーサースピリット賞」受賞。趣味は、囲碁とジャズ。(note → https://note.com/sonodahisashi) 【座右の銘】法学は、物言わぬテミス(正義の女神)に言葉を与ふる作業なり。

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