提言本件におけるメディアの責任のポイントはふたつあります。 ひとつは、過去に幾度も指摘されてきた性加害問題を報道してこなかったこと。 もうひとつは、制作や編成局などがジャニーズを退所した芸能人を干すなどで加担してきたことです。 この報道と制作の両者の忖度は、ともにコンテンツ引き上げを恐れたからだと考えられます。しかし、それによってジャニーズ一強体制が生まれ、そしてジャニー喜多川氏の加害行為が温存されてきました。 そこで各社により必要とされるのはこれまでのジャニーズとの関係をちゃんと検証することではないでしょうか。 たとえばテレ朝『ミュージックステーション』はいまもジャニーズの競合グループを出演させていません。そんな状況だからこそ、ジャニーズを離れられずに被害にあったひとがいたのです。その「共犯関係」を解消し、過去を検証しないかぎり信頼は回復されません。ちゃんとできないものですか?
コメンテータープロフィール
まつたにそういちろう/1974年生まれ、広島市出身。専門は文化社会学、社会情報学。映画、音楽、テレビ、ファッション、スポーツ、社会現象、ネットなど、文化やメディアについて執筆。著書に『ギャルと不思議ちゃん論:女の子たちの三十年戦争』(2012年)、『SMAPはなぜ解散したのか』(2017年)、共著に『ポスト〈カワイイ〉の文化社会学』(2017年)、『文化社会学の視座』(2008年)、『どこか〈問題化〉される若者たち』(2008年)など。現在、NHKラジオ第1『Nらじ』にレギュラー出演中。中央大学大学院文学研究科社会情報学専攻博士後期課程単位取得退学。 trickflesh@gmail.com