補足昨年末、米連邦議会はNATO離脱の際に議会承認を必要とする条項を含む法律「2024年度国防権限法」を成立。同条項を民主党のケイン上院議員と起案したのは国務長官に指名されたルビオ氏であった。同条項はトランプ氏が政権復帰の場合の対策であった。同法により、将来の大統領が米国をNATOから離脱させるのは容易ではないとの見方が支配的だ。だが、憲法では大統領と議会の外交権限の区分を意図的に不明瞭にしているため、仮にトランプ氏が単独でNATO離脱を発表の場合、司法で争われるかもしれない。その際、最高裁は政治的判断に委ね、関与しないことも予想される。 集団的自衛権を定めているNATO第5条に基づき、NATO加盟国への攻撃で米国が反撃することをロシアが信用してきたことが抑止力を発揮してきた。NATOを離脱しなくても、トランプ氏の度重なるNATO批判により、この抑止力が低下していくリスクも懸念されている。
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コメンテータープロフィール
慶応義塾大学(総合政策学部)卒業。ハーバード大学ケネディ行政大学院(行政学修士)修了。同大学院卒業時にLucius N. Littauerフェロー賞受賞。松下電器産業(現パナソニック)CIS中近東アフリカ本部、日本貿易振興機構(JETRO)海外調査部、政治リスク調査会社ユーラシア・グループを経て、2013年より米州住友商事会社。2020年より同社ワシントン事務所調査部長。著書に『米国通商政策リスクと対米投資・貿易』(共著、文眞堂)。コメントは個人の見解であり、所属組織を代表するものではありません。
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