解説昨年のサウジアラビアとイランの国交正常化合意の仲介にも顕著に見られるように、中国は近年、中東地域における関与で政治的地位の拡大を目指しているようだ。パレスチナ問題についても、その当時から中東和平の仲介を申し出ていたものの、これまで実現してこなかった。ガザでの戦争をめぐり、ファタハとハマースがバラバラな動きを見せる中で、その仲介をし国際的なプレゼンスを高めることが目的なのだろう。 しかし中国はパレスチナ問題に関して特に明確なビジョンや支持を示してきたわけではなく、カタールやエジプトが停戦交渉において果たしているような実質的な仲介の役割を果たせる力があるかは疑わしい。そもそもファタハとハマースの統一政府樹立の動きには、イスラエルが反対しており、これまで何度も試みられて失敗してきたものである。この合意が実質化すれば大変望ましいが、その可能性は低いと言わざるを得ないだろう。
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コメンテータープロフィール
専門はパレスチナ/イスラエルを中心とした中東地域研究、移民/難民研究。東京大学法学部卒業、同法学政治学研究科修士課程修了、総合研究大学院大学文化科学研究科博士課程修了、博士(文学)。早稲田大学イスラーム地域研究機構研究助手、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所准教授等を経て、現職。ベイルート・アメリカン大学客員研究員、ヘブライ大学トルーマン研究所客員研究員、ロンドン大学東洋・アフリカ研究学院客員研究員などを歴任。単著に『ディアスポラのパレスチナ人―「故郷(ワタン)」とナショナル・アイデンティティ』、編著に『政治主体としての移民/難民――人の移動が織り成す社会とシィティズンシップ』など。
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