解説ハニーヤやミシュアルと並ぶハマース幹部への貴重なインタビュー記事だ。ガザ北部ではアメリカの仲介で戦闘の一時停止が始まった。9日にはモサド長官とCIA長官がカタール首相を訪問して人質解放について協議し、ハニーヤとミシュアルはカイロでエジプト情報局長官と会談している。ハマースとイスラエルの「直接の交渉」は無理だが、カタールとエジプトの連携で仲介が成立するなら、今後は政治的進展も期待できる。 今回の戦闘は国際的関心も高く、民間人の人質はマルズークが指摘するように「ゲスト」として保護する方が戦略的に有利となる。取引の手札としては軍人捕虜が手元に残ればよく、一定数の民間人の人質解放交渉はこれから進展する余地があるだろう。イスラエルとしてもガザ北部を制圧して軍事作戦の一定の成果を国内向けに示せた今の時点でなら、「テロリスト」に屈服したとは見られず、交渉に応じやすい環境となってきているのではないか。
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コメンテータープロフィール
専門はパレスチナ/イスラエルを中心とした中東地域研究、移民/難民研究。東京大学法学部卒業、同法学政治学研究科修士課程修了、総合研究大学院大学文化科学研究科博士課程修了、博士(文学)。早稲田大学イスラーム地域研究機構研究助手、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所准教授等を経て、現職。ベイルート・アメリカン大学客員研究員、ヘブライ大学トルーマン研究所客員研究員、ロンドン大学東洋・アフリカ研究学院客員研究員などを歴任。単著に『ディアスポラのパレスチナ人―「故郷(ワタン)」とナショナル・アイデンティティ』、編著に『政治主体としての移民/難民――人の移動が織り成す社会とシィティズンシップ』など。