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錦田愛子

錦田愛子

認証済み

慶應義塾大学法学部教授

報告

見解進展がないように見える停戦交渉だが、先月から少し動きが見られる。5月初めにハマース側が受け入れ、イスラエルの戦時内閣が拒否した内容から、さらに発展させた三段階案が出され、5月末にはそれにバイデン大統領がお墨付きを与えた。今度は安保理が決議でそれを支持し、戦闘を続ける両者へ圧力をかけている。このまま進めば他に選択肢を失い、一時的にでも停戦が成立する可能性はある。 問題はこの停戦案が、実質的に何も定めていないことだ。人質は段階的に解放し、最終的にイスラエルは軍を撤退させる、ガザは復興に向かうだろう、という以上のことは書かれていない。誰もが反論できなそうな大筋のみを定めて合意と呼んだところで、いざ実施の段階となれば、具体的に多くの支障が生じて頓挫することは目に見えている。難題はすべて棚上げにした上で方向だけ示し、結局は行き詰まって崩壊したオスロ合意を彷彿とさせる。同じ失敗を繰り返してはならない。

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同じ記事に対する他のコメンテーターコメント

  • 鈴木一人

    東京大学教授/地経学研究所長

    解説アメリカはあくまでもこの停戦案が「イスラエルの」停戦案だと言い張りたいようだが、ネタニヤフ政権の閣僚…続きを読む

  • 六辻彰二

    国際政治学者

    見解この合意の最大の焦点は、イスラエルの合意と履行にある。 1週間前、イスラエルメディアの取材を受けたネ…続きを読む

コメンテータープロフィール

専門はパレスチナ/イスラエルを中心とした中東地域研究、移民/難民研究。東京大学法学部卒業、同法学政治学研究科修士課程修了、総合研究大学院大学文化科学研究科博士課程修了、博士(文学)。早稲田大学イスラーム地域研究機構研究助手、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所准教授等を経て、現職。ベイルート・アメリカン大学客員研究員、ヘブライ大学トルーマン研究所客員研究員、ロンドン大学東洋・アフリカ研究学院客員研究員などを歴任。単著に『ディアスポラのパレスチナ人―「故郷(ワタン)」とナショナル・アイデンティティ』、編著に『政治主体としての移民/難民――人の移動が織り成す社会とシィティズンシップ』など。

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