解説ノーベル賞委員会のフリドネス氏は1984年生まれで、広島も長崎も訪れたことはなく被爆者と直接話したこともないとのことだが、「ノルウェーという地球の反対側にいながら、被爆者の話を知ることができた」として、被爆者が証言を続け、核廃絶という目標を世界に広め続けてきたことが、「核兵器は決して使ってはならない非人道的な兵器だ」という規範の確立に貢献したと讃えている。被爆者の存在や伝承がなければ、人類は核の悲惨さを理解することもなく、核がもっと安易に使用される世界になっていたかもしれない。 被団協のノーベル平和賞受賞は、被爆者のみならず世界の多くの人の願いでもある核廃絶を、日本外交にいかに位置づけるかを改めて問うている。核兵器禁止条約の締約国会議には既にドイツやベルギー、ノルウェーなどもオブザーバー参加しているが、日本も未来の加盟を想定し、まずはオブザーバー参加に踏み出すべきではないか。
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コメンテータープロフィール
アメリカ政治・外交、国際関係論、平和研究。東京大学教養学部卒、同大大学院総合文化研究科で博士号取得(学術)。日本学術振興会特別研究員、早稲田大学助手、米国ハーバード大学、ジョンズホプキンズ大学研究員、関西外国語大学助教、高崎経済大学経済学部国際学科准教授を経て2022年より現職。著書に『戦争違法化運動の時代-「危機の20年」のアメリカ国際関係思想』(名古屋大学出版会、2014年)共訳・解説に『リベラリズムー失われた歴史と現在』(ヘレナ・ローゼンブラット著、青土社)。