政府債務を「借金」とみなし、それを個人に割り振ると、どの程度の規模になるのかは、確かに借金の大きさを具体的にイメージさせる手法としては有効でしょう。ただし、「個人」の借金は全額返済しなければならないのに対し、政府債務の場合にはその必要がないのは説明しておく必要があります。 なぜなら、政府は債務の反対側に資産も保有しているためです。具体的には、国有地、橋、道路などがあります。また、外貨準備をみると、政府は100兆円以上を保有していますが、反対側には見合いの短期国債があります。政府は、ただ単に1255兆円の借金のみを背負っているわけではありません。個人に割り振って計算した借金額は膨大ですが、全額返済するものではないので、財政の将来を過度に悲観する必要性は乏しいでしょう。むしろ、財政赤字の膨張を恐れて必要な財政手当が行われないことを憂慮した方がよいと言えます。
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コメンテータープロフィール
1989年入社、外国経済部、ロンドン特派員、経済部などを経て現職。1997年から日銀記者クラブに所属して金融政策や市場動向、金融経済の動きを取材しています。金融政策、市場動向の背景などをなるべくわかりやすく解説していきます。言うまでもなく、こちらで書く内容は個人的な見解に基づくものです。よろしくお願いします。