介入効果に疑問の声、29日の「円買い」過去最大規模に匹敵との推計も
(ブルームバーグ): 日本の通貨当局が1年半ぶりに円買い介入を実施した可能性が高まる中、市場では早くもその効果について懐疑的な見方が広がっている。東京市場が祝日だった4月29日、流動性が低い中で円相場は34年ぶりの1ドル=160円台から154円台まで急反発したが、わずか1日余りで157円後半と半値以上戻している。
今回の円買い介入の規模は5兆円超とも推計されており、2022年9~10月にかけて3回実施された円買い介入のうち過去最大だった2回目の約5兆6000億円と比較しても遜色ない規模だったとみられる。
29日の為替介入は5.5兆円規模の可能性、日銀当座預金見通しが示唆
もっとも、外為どっとコム総合研究所の神田卓也調査部長は「商いがそれほどなかったはずのマーケットで5兆円規模の金額が投入されたにもかかわらず、5円ちょっとの円の押し上げで、すぐ半分以上戻してしまった」と指摘し、2年前の介入と比べて「コストパフォーマンスはあまり良くなかった印象」と言う。
円安は輸入物価の上昇を通じて家計や企業を圧迫する。産業界からは過度な円安を懸念する声が出ているが、米国の利下げが遠のき、日本銀行が追加利上げを急がない中、円安・ドル高の流れを変えるのは難しい。通貨当局は今後も苦戦を強いられる可能性が高い。
ソニーフィナンシャルグループの森本淳太郎シニアアナリストは、日米の実質金利差との関係から見た円の対ドル相場は足元で154円程度が適正水準だとし、「これ以上、円を押し上げる力は介入にはない」と分析。目先の相場は米国経済の動向次第とみる。
政府・日銀は22年10月に2営業日連続で介入を実施。1990年以来の安値151円95銭を付けていた円は145円台まで反発し、その後上昇基調をたどった。米国の利上げが打ち止めになるとの観測が広がったことが大きく影響した。一方、1日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では根強いインフレにより利下げの先送りが示唆される可能性が警戒され、円安・ドル高が再び勢いづくリスクがある。