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川上泰徳

川上泰徳

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中東ジャーナリスト

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見解イスラエル軍がガザ一部で、毎日午前8時から午後7時の軍事活動の「戦術的一時停止」を始め、支援物資の搬入量を増やすことは、イスラエルメディアによると、閣議には諮られず、軍の決定にネタニヤフ首相は反対を伝え、軍から「ラファでの戦闘継続の方針に変化はない」という返答を得たという。それでも連立する極右政党幹部は軍の措置に反対している。政権から「戦闘継続」を命じられている軍が国際社会や米国から人道状況悪化への批判や圧力を受けて、政権の意向を聞かず、独自に決定し、政権と行き違いが生じているという構図だ。ガンツ元国防相とエイゼンコット幹部ら2人の元参謀総長が率いる中道「国民統一連合」が戦時内閣から離脱したことで、ガンツ氏らがつないでいた軍と政権の信頼関係が揺らぎ始めたと見ることもできよう。ただし、軍の狙いは停戦が実現しない状況でいかに「戦闘継続」するかであり、これではガザの状況改善にはつながらない。

同じ記事に対する他のコメンテーターコメント

  • 鈴木一人

    東京大学教授/地経学研究所長

    解説あくまでも一時的な停止であり、ハマスが望んでいる恒久的停戦ではないだろうが、とりあえず停戦交渉に向け…続きを読む

コメンテータープロフィール

元朝日新聞記者。カイロ、エルサレム、バグダッドなどに駐在し、パレスチナ紛争、イラク戦争、「アラブの春」などを現地取材。中東報道で2002年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。2015年からフリーランス。フリーになってベイルートのパレスチナ難民キャンプに通って取材したパレスチナ人のヒューマンストーリーを「シャティーラの記憶 パレスチナ難民キャンプの70年」(岩波書店)として刊行。他に「中東の現場を歩く」(合同出版)、「『イスラム国』はテロの元凶ではない」(集英社新書)、「戦争・革命・テロの連鎖 中東危機を読む」(彩流社)など。◇連絡先:kawakami.yasunori2016@gmail.com

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