見解ヒズボラ指導者ナスララ師殺害の後、イランがイスラエルに180発の弾道ミサイルを撃ち、大きな被害は出ていないのは、イランの攻撃が限定されたものと考えるしかない。イランとしてはイスラエルによると見られるハマスの政治指導者ハニヤ氏暗殺も一緒に片付けたことになる。規模的には昨年10月の越境攻撃でハマスが15分間で5千発のミサイルを撃ったことを考えれば少なく、15万発のミサイルを保有するとされるヒズボラが直接イスラエルに大規模報復をする必要もなくなる。イランとしては米国大統領選前に、対米関係を悪化させたくないという自制が続いているということだろう。バイデン米大統領がイラン攻撃は「効果がなかった」と言ってしまうところが、米国も安堵したということだろう。裏を返せば、ヒズボラもイランも、本格的攻撃する選択肢を延期したということであり、イスラエルの地上侵攻が続けば中東危機の緊張が続くことになる。
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コメンテータープロフィール
元朝日新聞記者。カイロ、エルサレム、バグダッドなどに駐在し、パレスチナ紛争、イラク戦争、「アラブの春」などを現地取材。中東報道で2002年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。2015年からフリーランス。フリーになってベイルートのパレスチナ難民キャンプに通って取材したパレスチナ人のヒューマンストーリーを「シャティーラの記憶 パレスチナ難民キャンプの70年」(岩波書店)として刊行。他に「中東の現場を歩く」(合同出版)、「『イスラム国』はテロの元凶ではない」(集英社新書)、「戦争・革命・テロの連鎖 中東危機を読む」(彩流社)など。◇連絡先:kawakami.yasunori2016@gmail.com
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