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川上泰徳

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中東ジャーナリスト

報告

見解事実関係で言えば、完全撤退や戦闘終結という停戦のための譲歩を拒否しているのはハマスではなく、ネタニヤフ首相である。同首相がレバノンへの戦線拡大にでたのは、ガザで停戦を拒否して攻撃を激化させても、①ハマスを軍事的政治的に壊滅できない、②人質を軍事的に奪還できないーーため、国内世論の批判の高まりと軍との関係悪化が生じ、国内の目をガザからそらす必要があったためだ。それ自体がネタニヤフ政権のガザ戦略の破綻を示す。カタールにあるハマス政治部門がガザで「長期抗戦」を言うのは、政治部門は軍事部門のカッサーム軍団を指揮する権限はないので、ガザの戦況を見ながら政治部門としてガザの状況を、そのように位置づけたということである。さらに、「長期抗戦」は軍事だけでなく、政治的・社会的な意味もあり、占領地のパレスチナ民衆と国際社会に向けて、占領との戦いを継続するというハマスの政治的立場を確認したということだろう。

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  • 鈴木一人

    東京大学教授/地経学研究所長

    解説イスラエルは相当なコストと犠牲を払ってハマスを殲滅しようとしているが、それでもカタールでは政治部門が…続きを読む

コメンテータープロフィール

元朝日新聞記者。カイロ、エルサレム、バグダッドなどに駐在し、パレスチナ紛争、イラク戦争、「アラブの春」などを現地取材。中東報道で2002年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。2015年からフリーランス。フリーになってベイルートのパレスチナ難民キャンプに通って取材したパレスチナ人のヒューマンストーリーを「シャティーラの記憶 パレスチナ難民キャンプの70年」(岩波書店)として刊行。他に「中東の現場を歩く」(合同出版)、「『イスラム国』はテロの元凶ではない」(集英社新書)、「戦争・革命・テロの連鎖 中東危機を読む」(彩流社)など。◇連絡先:kawakami.yasunori2016@gmail.com

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