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川上泰徳

川上泰徳

認証済み

中東ジャーナリスト

報告

見解イランのライシ大統領とアブドラヒアン外相が一度に死亡したことは、ガザ情勢を巡ってイスラエルや米国との緊張関係が高いときでもあり、対外関係に与える影響は小さくないだろう。ただし、ライシ大統領は強硬派の宗教者であり、同じく強硬派の最高指導者ハメネイ師の意向を受けて、国政を運営する立場なので、国内の引き締め役であり、対外的な影響は少ない。むしろ、イラク・湾岸の外交専門家で、昨年3月のサウジアラビアとの国交正常化を実現したアブドラヒアン外相の死去による影響はかなり深刻である。宗教者主導体制のイランでは、アブドラヒアン氏のような有能なテクノクラートの存在は他の国以上に重要である。特にガザ人道危機を巡ってイランがイスラエルと対抗して、サウジやUAE、カタールをはじめとするアラブ諸国への働きかけが必要で、イランの外交力が問われる時だけに、イランとしては手痛い損失となるだろう。

コメンテータープロフィール

元朝日新聞記者。カイロ、エルサレム、バグダッドなどに駐在し、パレスチナ紛争、イラク戦争、「アラブの春」などを現地取材。中東報道で2002年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。2015年からフリーランス。フリーになってベイルートのパレスチナ難民キャンプに通って取材したパレスチナ人のヒューマンストーリーを「シャティーラの記憶 パレスチナ難民キャンプの70年」(岩波書店)として刊行。他に「中東の現場を歩く」(合同出版)、「『イスラム国』はテロの元凶ではない」(集英社新書)、「戦争・革命・テロの連鎖 中東危機を読む」(彩流社)など。◇連絡先:kawakami.yasunori2016@gmail.com

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