Yahoo!ニュース

韓東賢

韓東賢認証済み

認証済み

日本映画大学教員(社会学)

報告

『軍艦島』を「保守派寄りの大作映画」としているが、〈抗日〉だから「保守派寄り」という見方は短絡では。韓国では保守的な右派、進歩的な左派ともに民族主義や過去の歴史清算への意識は強い。実際、公開前の本作には左派からの期待も大きかったし、公開後、その立場からの批判も寄せられた。 本作の「失敗」について言えば、歴史的事実のエンタメ化という難しいかじ取りの失敗だろう。娯楽のために悲劇や政治が動員、消費されているように見え、反発を買ったのだ。リュ・スンワン監督については、大ヒットした前作『ベテラン』(2015)に対しても一部で「怒りの商品化」という批判があったが、朴槿恵政権下で勧善懲悪の「ファンタジー」は広く支持された。実際にサムスンのトップが逮捕された政権交代後の今だったら、ヒットしなかったかもしれない。 エンタメ指向のリュ監督に、「軍艦島」は手に余るテーマだったのか。早く自分の目で確認したい。

こちらの記事は掲載が終了しています

参考になった395

コメンテータープロフィール

韓東賢

日本映画大学教員(社会学)

ハン・トンヒョン 1968年東京生まれ。専門はネイションとエスニシティ、マイノリティ・マジョリティの関係やアイデンティティ、差別の問題など。主なフィールドは在日コリアンのことを中心に日本の多文化状況。韓国エンタメにも関心。著書に『チマ・チョゴリ制服の民族誌(エスノグラフィ)』(双風舎,2006.電子版はPitch Communications,2015)、共著に『ポリティカル・コレクトネスからどこへ』(2022,有斐閣)、『韓国映画・ドラマ──わたしたちのおしゃべりの記録 2014~2020』(2021,駒草出版)、『平成史【完全版】』(河出書房新社,2019)など。

韓東賢の最近のコメント

  • 韓東賢

    日本映画大学教員(社会学)

    記事で明らかになった吉野家の問題点は、まず、名前などから国籍を勝手に判断したことだ。当該の大学生はS…続きを読む

    こちらの記事は掲載が終了しています

  • 韓東賢

    日本映画大学教員(社会学)

    そもそもは文科省が2003年の大学入学資格の弾力化に際し、各種学校カテゴリーのインターナショナルスク…続きを読む

    こちらの記事は掲載が終了しています