見解被爆者の皆さんや市民社会の運動をやっている皆さんから見ればがっかりということなのだろう。他方、中国と北朝鮮が核戦力を増強して東アジア地域の安全保障環境が著しく悪化し、ロシアが核兵器使用を示唆する振る舞いをしながら隣国を侵略して世界中で核使用の懸念が高まり、さらに核兵器を持つイスラエルと核開発疑惑のあるイランが反目する中東など、明らかに核兵器の存在感が増している中、もっと核抑止や核の役割の強化を含む政策を前面に打ち出す選択肢もあったはずだ。にも関わらず核軍縮を進める姿勢を維持し続けたことは、岸田総理だからこそだと見るべきだろう。本人も昨年のG7の記者会見でも述べた通り、国家指導者には直面する脅威からの「国民を守る」責任と「核兵器のない世界」という理想を追求する責任という二つの責任がある。厳しい情勢の中で後者を掲げ続け実際にいろんな手立てを講じてきたことは率直に評価されるべきだと思う。
コメンテータープロフィール
専門は国際政治。特に、安全保障、軍備管理・軍縮、不拡散、エネルギー安全保障。広島平和研究所専任講師、日本国際問題研究所主任研究員、在ウィーン国際機関日本政府代表部公使参事官などを歴任。日本軍縮学会会長。博士(法学)。
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