Inside2021.09.07

単なる挿絵には意味がない――「ビジュアルで知る」が目指す、わかりやすいニュースの届け方

「ビジュアルで知る」は、グラフィックや没入感のある表現でニュースをわかりやすく、興味深く伝える、「Yahoo!ニュース オリジナル 特集」のビジュアルコンテンツシリーズです。「米大統領選」「線状降水帯」「生理の貧困」など、さまざまな話題のトピックを図解で伝えるほか、「Yahoo!ニュース コメント」を活用してユーザーに意見を求めるディスカッション型の企画など、新しい情報の伝え方にトライしています。

企画段階から、編集者だけでなく、デザイナー、エンジニアも参加するというこの取り組み。職種の異なるメンバーがともに企画を進めるうえでの工夫や、制作を通して得たことについて、担当者に聞きました。

編集者とデザイナー、ともに作るコンテンツ

「ビジュアルで知る」のコンテンツを作るチームから、取材に応えた4人のメンバー

202010月に立ち上がった「ビジュアルで知る」。コンテンツを作るチームは、編集者10人、デザイナー2人、エンジニア1人、ディレクター1人、そしてプロジェクトマネジャー1人で構成されています。表や図解、イラストなどのグラフィックを効果的に使用し、いま話題のニュースをわかりやすく解説すること、時には没入感のあるリッチな表現でニュースに関心を持ってもらうことが狙いです。

プロジェクトマネジャーの角野雅美さんは、立ち上げの経緯についてこう説明します。

「Yahoo!ニュースではこれまでも、表や図解を使ってニュースをわかりやすく伝える工夫をしてきました。『ビジュアルで知る』の取り組みも、その流れで生まれたものです。編集者とデザイナーが企画段階から一緒に取り組むことが特徴で、それぞれの強みを生かしながらよりよい伝え方を模索しています」(角野さん)

これまでに22本のコンテンツを公開してきましたが、その見せ方はさまざま。

一つは、話題のニュースを素早く届けるために、5〜10枚の表や図解とテキストを組み合わせたシンプルなコンテンツ。

『生理の貧困』ってなんだろう――言えない、買えない 問題の背景は

それから、JavaScriptやCSSによるインタラクティブな体験や、マンガやgifアニメなどの多彩な表現でリッチに構成されたコンテンツ。

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さらに、Yahoo!ニュースのコメント欄でユーザーに意見を求め、それを元に構成したディスカッション型の企画もあります。

『選択的週休3日制』みんなはどう考えた?

「『生理の貧困』のようなシンプルな構成のコンテンツでは、話題のニュースを体系的かつスピーディーに伝えられる強みがあります。『線状降水帯』や『熱中症アラート』といった専門用語の多い天気の話題や、文字だけでは解説が複雑になりがちな政治の話題など、ビジュアルの力を生かせるテーマを検討しながら、さまざまな分野にチャレンジしてきました」(同)

シンプルな構成で制作した「『生理の貧困』ってなんだろう――言えない、買えない 問題の背景は」。記事から抜粋。デザインは佐島さんが担当

一方、リッチな構成のコンテンツでは、デザインの力をフルに活用して、ユーザーにニュースを深く理解してもらえるように意識しています。

「見せ方にこだわる分、制作にも時間がかかりますね。編集とデザイナーだけではなく、エンジニアも招いて、一つのコンテンツを作り上げていきます。発案から公開まで約1カ月間で制作した『ストップ・リバウンド』という企画では毎朝ミーティングを実施し、職種間の認識をすり合わせ、目線を揃えながら進行しました」(同)

リッチな構成のコンテンツ「学校行かないとダメですか?」から抜粋。デザインは曽我部さんが担当

そして、Yahoo!ニュースのコメント欄で展開されるユーザー同士のディスカッションから世論の傾向を可視化する、ユーザー参加型のコンテンツ。

「Yahoo!ニュースでは『ユーザーと作り上げる』ことを目指す企画をいくつか立ち上げていますが、『ビジュアルで知る』で取り組むディスカッション型の企画もその一つ。これまでに4本のコンテンツを公開してきましたが、そのたびに、コメントを通して知るユーザーの声に新しい発見がありました」(同)

Yahoo!ニュースでは、「Yahoo!ニュース コメント」の健全化を目的に導入している「深層学習を用いた自然言語処理モデル(AI)」を利用して、コメントを評価しています。その技術を利用したうえで、コメントを一つずつ読み、コンテンツ作りに生かしているそうです。

「ディスカッション型の企画には、毎回多くのユーザーに参加いただいています。献血をテーマにした企画では4300件ものコメントをいただき、プロジェクトのメンバー全員が驚きました。ユーザーのニーズに応える企画を、これからも考えていきたいです」(同)

ディスカッション型の企画「『選択的週休3日制』みんなはどう考えた?」。記事から抜粋。デザインは曽我部さんが担当

「ニュースを感覚でつかむ」を目指して

制作にあたっては、それぞれどんなことを意識しているのでしょうか。編集の杉岡佑子さんはこう語ります。

「以前は動画制作などに携わっていたので、グラフィックを中心としたコンテンツ作りに慣れはあったものの、苦労はありました。どこまで図解に任せ、どの部分をテキストが担うのか。バランスを考えてプロット(構成)を作るのが難しいです。例えば、PCとスマホでは文字量の見え方も変わります。どのように最適化するかなど、課題は尽きません」(杉岡さん)

制作過程では、編集者とデザイナーの連携が必須。デザイナーも取材に同行し、コンテンツのイメージを膨らませるそうです。デザイナーの曽我部花実さんは、こんな工夫をしています。

「場所は言葉で示すのではなく地図にマッピングしたり、ネガティブ・ポジティブ・中立といった立場を表すために、寒色・暖色・中間色と色を使い分けたりするなど、直感的に理解しやすい図解を目指しています。普段の生活で、暑い、寒い、大きい、小さいなどを感じるように、ニュースも感覚でつかめたら、忙しい読者もスピーディーに読めるのでは。編集者と相談したり、取材でそういう情報をつかみ取るように意識したりしています」(曽我部さん)

「ビジュアルで知る」のデザイナーの役割は、原稿の一部をグラフィックに起こすのではなく、原稿全体をしっかり読み込んで、全体のイメージをビジュアルに落とし込むこと。デザイナーの佐島実紗さんは、企画の初期段階から工夫して進めていると言います。

「企画が決まったら、取材に入る前に、編集者とデザイナーでデザインに関するミーティングを行います。プロットやラフスケッチを用いて、『これを図で見せたらわかりやすい』『ここをイラストにしたらユーザーに届くのでは』と、最初の段階からイメージをすり合わせています」(佐島さん)

ラフから最終校までの流れ。編集者とデザイナー両方の視点で見せ方をチェックする

ビジュアルが単なる「挿絵」ではなく、ちゃんと記事の中で意味を持つものになっているか。プロジェクト発足直後は手探りでしたが、いまでは、それぞれが「ビジュアルの力を生かす」という視点を持って、企画を考えられるようになってきたそうです。

デザイナーの活躍に手ごたえ

新学期がスタートするタイミングに合わせて公開した「学校行かないとダメですか?」は、リッチな構成のコンテンツであり、ディスカッション型の企画でもあります。

事前にYahoo!ニュースのコメント欄で募ったコメントを紹介しつつ、「学校に行きたくない」と思う子どもたちの心に寄り添う内容です。動くグラフィックや漫画風のイラストで、悩みを抱える子どもたちに共感してもらえるよう、また読み進めやすいように工夫しました。

「学校行かないとダメですか?」の記事から一部抜粋

「強いメッセージを受け取ることができるのはすごいことだと思います」「学校開始を目前としている子どもたちを勇気づける、心を救う素晴らしい記事」「当事者の子どもたちにも、親にも読んでほしい」などと、SNSを含めてたくさんの声が寄せられました。

「Yahoo!ニュースのデザイナーは、媒体社からお預かりした記事を最適な形で届ける体験の設計が主な役割で、自らコンテンツを制作する機会はほとんどありませんでした。ビジュアル表現の得意なデザイナーの活躍の場が広がっていくことは嬉しいです」(角野さん)

企画段階からデザインを中心に据えたコンテンツ作りは、デザイナーのモチベーションを高めることにつながっていると、佐島さん、曽我部さんも口をそろえます。

「Yahoo!ニュースのオリジナルコンテンツを作ることは、Yahoo!ニュースのファンを増やすことにつながると思います。また、Yahoo!ニュースが何をどう考えているのか、表現することでもある。人の共感を得たり気持ちを動かしたりすることは簡単ではないですし、場合によってはネガティブに働くこともあるので責任を感じます」(曽我部さん)

編集とデザインの力をかけ合わせ、ニュースをよりわかりやすく、興味深く伝えるチャレンジを続けていく。Yahoo!ニュース オリジナル 特集「ビジュアルで知る」は、これからも進化していきます。

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