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オザワタクヤ

線状降水帯はなぜ怖い? わからないことだらけの気象現象に備えるために

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今年の日本列島は、西日本や東海地方で例年よりもかなり早い梅雨入りになった。雨の多いこの季節、「線状降水帯」という言葉を耳にする。近年の気象報道で使われるようになった用語で、次々と発生した積乱雲が列をなして停滞し、同じ地域に強い雨を長い時間降らせる現象だ。河川の氾濫や土砂崩れを引き起こし、各地で大きな被害も出している。線状降水帯はなぜ大雨を降らせるのか。私たちが生命と財産を守るためにできることは何だろうか。気象庁に聞いた。(デザイン&イラスト:オザワタクヤ、取材・文:Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)

「線状降水帯」はどんな形をしているのか?

線状降水帯のレーダー画像は、このように「線状」に見える。

細長い線のように延びた雨雲が連なっていて、長さは50kmから300km程度、幅は20kmから50km程度とされる。強い雨を長い時間降らせ、河川の氾濫や土砂災害を引き起こすこともある。線状降水帯が一因となり、過去5年は毎年のように「激甚災害」が発生している。激甚災害とは、被災自治体への財政援助や被災者への助成が必要なほど被災規模が甚大な災害を指す。

この5年で起きた激甚災害を振り返る

上記の図表「令和2年7月豪雨」の死者・行方不明者、住宅被害はもっとも被害が大きかった熊本県のみの数になっている。図表は内閣府資料をもとに編集部で作成。

線状降水帯はどうやって生まれるのか

段階1:暖かく湿った空気で、積乱雲が発生する

線状降水帯はどのように生まれるのか。まず、海上などから流れてくる「暖かく湿った空気」が「山」にぶつかることから始まる。暖かい空気と冷たい空気の境目に生まれる「前線」にぶつかるケースもある。

いずれにせよ、山や前線にぶつかった暖かい空気は上方に移動しようとするので、「上昇気流」が発生。その後、積乱雲(いわゆる雨雲)が発生し、雨を降らせるという仕組みだ。

段階2:積乱雲が連続発生、線のように連なっていく

暖かく湿った空気の流入が続き、積乱雲が連続的に発生。積乱雲は上空の風に流されて細長く線状に連なっていき、停滞する。積乱雲単体の「寿命」は短く、1時間程度で消滅するが、線状降水帯の場合は積乱雲が次々と発生することで、長い時間大雨を降らせることになる。

「線状降水帯はわからないことが多い」

気象庁の担当者はこう言う。

「線状降水帯はまだわからないことが多いです。『九州北部豪雨』(2017年)では大分県と福岡県に大きな被害が出ました。島根県の上空にあった雨域は、だんだんと南下を続け、われわれは『このまま太平洋に抜けるだろう』と予想していたものの、九州北部でぴたっと止まり、雨を降らせ続けました。なんで止まったのか。メカニズムを解明しないといけません」

線状降水帯はわからないことだらけともいえる。それだけに予測も難しい。気象庁担当者はこう続ける。

「予測が難しい一番の理由は、『スケールの小ささ』にあります。線状降水帯の幅は数十km、長さは最大で300km程度です。大きさが数百kmから1000kmに及ぶ台風や前線と比べると、かなり小さい。そのぶん予測が難しいんです」

「いざ」という時に向けて、私たちはどう備えたらよいのか

長い時間にわたって、大雨を降らせることがある線状降水帯。気象庁気象研究所によれば、2020年7月に熊本県の球磨川流域に記録的な大雨をもたらした線状降水帯は、長さ約280kmで13時間停滞した。自然が牙をむいたときに、私たちは何をするべきなのか。気象庁担当者によれば、大事なのは「事前の備え」だという。

備え1:あなたのいる場所は安全か? ハザードマップで確認

国土交通省は「重ねるハザードマップ」をインターネット上で公開していて、誰でも閲覧できる。確認したい住所を入力すれば、その場所の「洪水による浸水」「土砂災害」などの災害リスクがわかる。近年の大雨災害で、河川氾濫や土砂災害などの被害が出た場所は、ハザードマップとの相関関係が明らかになっている。信頼に足る情報と捉えてよい。

ただし、浸水想定区域が指定されていない中小河川もある。中小河川でも急激に水位が上昇すると危険なので、近くに住んでいる人は注意をして欲しい。ハザードマップは各自治体も作成・発行を行っている。印刷されたものが各戸に配布されていて、インターネット上でも公開されている。

グラフィックは想定イメージです

備え2:最寄りの避難場所を確認しておく

避難をするなら、なるべく河川や海、山の斜面から離れられる高い場所がいい。そういった条件を満たした最寄りの避難場所はどこにあるのか? 普段から「水平避難」できる場所への道順・所要時間は把握しておきたいし、知人宅やホテルなどへの避難も選択肢になる。

災害の状況次第では、避難場所への移動がかえって危険となる可能性もある。そのときに備えて、より短時間で移動できる高い場所も見つけておきたい。親戚が暮らしている2階以上のマンション、親しい人の住む隣のマンション、自宅の2階以上などだ。こうした「垂直避難」できる場所も、緊急的な選択肢として持っておきたい。しかし、河川や海、山の斜面に近い場所だと、土砂災害や河川氾濫などで建物ごと流されたり取り残されたりするリスクはある。

避難のタイミングはいつ? 避難が遅れた人への「最後の一押し」になる情報とは

避難などに関する情報は5段階の大雨警戒レベルにわけて自治体から発表される。以下が警戒レベルだ。

(図表作成:Yahoo!ニュース)

ハザードマップで、自分が災害リスクの高い場所にいることがわかった。その上で、大雨による「警戒レベル3:高齢者等避難」や「警戒レベル4:避難指示」を見聞きしたら、避難行動をとるべきだ。

それでも避難をしない人がいるかもしれない。そんな人たちに対して、避難を決断する際の「最後の一押し」になるのが「顕著な大雨に関する情報」。気象庁が2021年6月から運用を始めたものだ。線状降水帯が発生し、土砂災害や洪水の危険度が高まっていることを伝えるもので、インターネットやテレビ、ラジオを通じて周知される。

避難するタイミングは「警戒レベル5:緊急安全確保」が出てからでは遅い。なぜなら警戒レベル5は、災害が発生または切迫している状況を指し、避難場所への移動ができない可能性もあるし、必ず発令される情報でもない。そのような状況になる前、やはり警戒レベル3や警戒レベル4を見聞きしたタイミングで避難行動をとることが重要だ。

監修:三宅真太郎(気象予報士)