新型コロナは14日ごとに変異 感染研が分析 武漢株より怖い欧州株を食い止められるか
[ロンドン発]国内外の患者5073人から収集された新型コロナウイルスのゲノム情報を解読した結果、1年間で25.9カ所に塩基変異が起きると推定されることが国立感染症研究所(感染研)の調査で分かりました。単純計算で平均14日に1度のペースで変異していることになります。
欧米の医学者らが運営する新型コロナウイルスのゲノムに関する専門サイト「ネクストストレイン」に登録されているのは3650人分なので、それよりもサンプルが多くなっています。ネクストストレインのデータでは、変異のスピードは平均15日に1度とみられていました。
新型コロナウイルスは一本鎖プラス鎖RNAウイルスで全長29.9 キロベース(kb)。塩基1個を1b(ベース)と表すので29.9kbとは29.9×1000(k)=2万9900個の塩基から構成されることを意味しています。
2020年4月16日までに登録された国外患者4511人の新型コロナウイルスのゲノム配列と国内患者562人のそれを解読。その結果、中国湖北省武漢市で2019年末に発生してから約4カ月間にゲノム全域に少なくとも9塩基ほどの変異がランダムに起きていることが示唆されたそうです。
感染研のHPに掲載された系統樹を見ると、日本国内での感染の広がりが「見える化」されています。
1月初旬に武漢市で発生したウイルス株(武漢株)を基点に日本各地に初期のクラスターが複数発生したものの、すでに消失へと転じていることが確認されました。
2月5日から本格的な検疫を開始したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」で確認された陽性患者のうち70人の新型コロナウイルス・ゲノム情報を武漢株と比較したところ1塩基のみ変異していたそうです。
ダイヤモンド・プリンセスを基点とする株は今のところ乗員乗客以外から検出されていません。つまり日本は14人の死者を出したもののダイヤモンド・プリンセス集団感染の封じ込めに成功したことになります。
一方、世界では欧州や北米で感染爆発が起き、日本でも欧州株を基点とした新型コロナウイルス株が検出されるようになりました。
日本は「中国」「湖北省」「武漢市」をキーワードに絞り込みがしやすかった中国経由の第一波を封じ込めたものの3月中旬以降、欧米経由の第二波の輸入症例が国内で広がっている恐れが強いようです。
ニューヨークなどアメリカ東海岸やイタリア、スペイン、フランス、英国など欧州で流行している欧州株は武漢株より深刻な被害を出しています。さらに輸入症例からの広がりは感染経路がたどりにくいだけに一段の警戒が必要です。
日本は空港や港など水際作戦の徹底や国家緊急事態宣言による外出自粛で危険な欧米経由の第二波を食い止められるかどうかの正念場に立たされています。
(おわり)