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韓国要人に「美女攻撃」…北朝鮮サイバー部隊

高英起デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト
金正恩氏・李雪主夫人とモランボン楽団

北朝鮮のサイバー攻撃が活発化している。なかには「色仕掛け」を駆使した驚くべき手口があった。

韓国の国家情報院(国情院)によると、北朝鮮は2月末から3月初めにかけて、韓国政府の主要人物が保有するスマートフォンにサイバー攻撃を仕掛け、一部が成功していたことが判明した。

その手口は、攻撃対象のスマホに悪性コード(ウイルス)を送り付ける方式。仕掛けられた約2割がウイルスに感染し、韓国政府の主要人物の電話番号、通話の内訳、内容、メールの内容までが持ち去られ、なかには軍関連責任者も含まれていたという。南北間の緊張が高まっているだけに、韓国政府も北朝鮮のサイバー攻撃に警戒を強めている。

(参考記事:北朝鮮「スマホ攻撃」で韓国政府関係者の個人情報を盗み出す

(参考記事:「北朝鮮のサイバーテロ脅威が増大」韓国政府に緊張感

しかし、北朝鮮が仕掛けたのは「スマホ攻撃」だけではなかった。国情院が明らかにした北朝鮮の驚くべきサイバー戦術、それはフェイスブックを通じた「ハニートラップ」。

北朝鮮がフェイスブックを通じて仕掛けた「ハニートラップ」は、まず実在するNGO機関「平和問題研究所」を装った偽アカウントを作成。美貌の女性写真を掲載し、韓国政府関係者に「友達申請」する。そして、関係者と繋がれば何らかの秘密資料などを要求するというもの。資料の譲渡があったかどうかは不明だが、数十人の関係者が「友達」になっていたという。

実に大胆かつ、ばかばかしい手口と言えるが、美女を政治に最大限活用する北朝鮮らしいといえばらしい。そもそも、北朝鮮には「喜び組」という美女を利用した統治システムが存在する。

(参考記事:北朝鮮の「喜び組」に新証言…韓国テレビ「最高指導層の夜の奉仕は木蘭組」

過去には国際スポーツ大会に「美女応援団」を派遣して韓国男性を虜にした。海外の北朝鮮レストランでは、美人接待で外貨を稼くなど、体制維持のためには女性の人権そっちのけで、手段を問わない。もっとも、なかにはレストランの美人接待員が、韓国人男性と恋に落ちてしまい「愛の脱北逃避行」に走るケースもあるようだ。

(参考記事:中国で失踪…北朝鮮「美人接待員」たちの素顔

今のところ、大きな実害は報告されていないが、何人かが繋がってしまったという点では、韓国も脇が甘すぎる。南北間の緊張が高まるなか、まさか北朝鮮がフェイスブックで「ハニートラップ」を仕掛けてくるとは思っていなかったかもしれない。しかし、相手は女性の人権などお構いなく政治攻勢を仕掛けてくる国家・北朝鮮であることを忘れてはならない。

(参考記事:金正恩氏が「暴走」をやめられない本当の理由

デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)『金正恩核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)『北朝鮮ポップスの世界』(共著)(花伝社)など。YouTube「高英起チャンネル」でも独自情報を発信中。

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