日銀によるメディアを使った動きが7月と酷似、22日の政策修正はありうるか
9月22日で日銀は何らかの動きをみせる可能性がある。特に日銀によるメディアを使った戦術が7月と類似していることからもそれが窺える。
7月のメディアを通じた情報配信をまず振り返ってみたい。
日銀の金融政策を決めるにあたってのキーマンともいうべき内田副総裁によるインタビュー記事が7月7日に出た。
インタビューで内田副総裁は、当面はYCCを続けていくと強調していた。ただし、ここで注意すべきは、YCCの解除は行わないものの、修正については言及していなかった点にあった。
18日のG20で内田副総裁はYCC見直しの必要性には直接、言及しなかった。
そして21日の16時半頃、ブルームバーグが「日銀は現時点でYCC副作用に対応の緊急性乏しいと認識」と報じ、ロイターが「日銀、金融政策維持の公算 YCC変動幅据え置きの可能性=関係筋」と報じた。
記事のタイトルからもわかるように、今回はYCC修正は見送るであろうと読めるものであった。いずれもいわゆる記者レクによるもので、憶測や観測記事ではない。執行部もしくは執行部に近い日銀関係者によるものではないかと推測された。
市場の一部でYCC修正の可能性が意識されていたことで、その観測を打ち消そうとしているかのような記事であった。これはあまり市場にYCC解除の可能性を示唆してしまうと、それに向けたヘッジファンドなどの仕掛的な動きが出る可能性があり、それをけん制したかのようにもみえる。
ところが今度は22日に、読売新聞が「長期金利上限 議論へ…日銀決定会合 大規模緩和は継続」とのタイトルの記事を掲載していた。少なくともこのタイトルを見る限り、緩和政策は維持するが、長期金利上限は議論し、修正の可能性を残すようにも読み取れる。
読売新聞は見直しを議論することがわかったとしているだけで、ロイター、ブルームバーグにあったような、事情に詳しい複数の関係者(5人?)、との表現はなかった。しかし、こちらは記者レクではないが執行部もしくは執行部に近いところからの意見を汲み入れた可能性があった。
結論からいえば、7月28日の金融政策決定会合で、日銀は長期金利の上限を実質的に0.5%から1.0%に引き上げた。
そして今度は9月である。
読売新聞は9日の朝刊一面で、日銀総裁の単独インタビュー記事を掲載した。タイトルは、『マイナス金利解除「選択肢」、賃金・物価上昇なら』となっていた。
このインタビュー記事の内容で注意すべきは「物価目標の実現にはまだ距離がある」としながらも、マイナス金利解除を選択肢としてあげたことであろう。マイナス金利の解除後も物価目標の達成が可能と判断すれば「やる」と発言。また「ビハインド・ザ・カーブを積極的に許容するというわけではない」とも総裁は発言していた。
7月7日の内田副総裁のインタビューでは、YCC修正には言及しないことで、その可能性を匂わせたが、この総裁発言はかなり踏み込んだものであり、匂わすといったものではなかった。
これに対して、15日にブルームバーグは、マイナス金利政策の解除など早期の政策正常化観測が強まる中、日銀内では発言内容と市場の解釈とのギャップを指摘する声が出ている、事情に詳しい複数の関係者への取材で分かったと伝えた。
事情に詳しい複数の(日銀)関係者が再登場している。これは7月21日のブルームバーグとロイターの記事と同様に市場観測を打ち消そうとするかのような記事であった。今回の複数の関係者も、執行部もしくは執行部に近い日銀関係者とみられる。
そして今度は17日に、読売新聞が「日銀、金利動向点検へ」という記事を報じた。ここでは「日銀は、市場関係者による取引で、より自立的に金利が決まる環境に移行したい考えだ」とあった。
7月22日の読売新聞と同様に再度の軌道修正というか、9月9日の植田総裁インタビューに即したようなものとなっていた。つまり7月22日の読売の記事同様の再修正のようにもみえる。
ということで、これらの記事の経緯を見る限りにおいて、22日の日銀の金融政策決定会合で何らかの政策修正が行われる可能性は極めて高いとの見方ができよう。
個人的には、さっさとマイナス金利やYCCを解除してほしいところだが、声明文の内容の一部修正、つまり緩和一辺倒のガイダンスを中立に修正する可能性が高いとみている。
7月28日に日付が変わったあとの深夜2時に日本経済新聞が「日銀、金利操作を柔軟運用 上限0.5%超え容認案」というスクープ記事を出したが、もしかすると22日の当日深夜に同様の記事が出てくる可能性もあるのであろうか。