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米10年債利回りが再び上昇、米利下げ先送り観測に加え、原油高なども要因に

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 2日の米10年債利回りは一時、4.40%と昨年11月以来の水準まで上昇した。目先の節目とみられていた2月に付けた直近ピークの4.35%を一時、抜けてきた。ここを本格的に抜けてくると、5%あたりまで節目らしい節目はない。

 ここにきて米10年債利回りが上昇してきたのは、3月のISM製造業景況感指数が50を1年半ぶりに上回るなど、経済指標がしっかりしていたこと、それを受けてFRBのパウエル議長は29日、利下げを急ぐ必要はないと語ったこともあり、FRBの利下げは先送りされるとの見方が強まったことによる。

 ただし、FRBの利下げ観測が消えたわけでなく、次のFRBのアクションは利下げとの見方は依然として強く、問題はそのタイミングということになる。

 そうであれば米10年債利回りの上昇は、行き過ぎではないかとの見方も出てくるとみられる。それにもかかわらず、米10年債利回りの上昇圧力が強まっているのはどうしてなのか。

 ひとつの要因として物価影響を与えやすい原油価格の動向がある。

 中東やウクライナ情勢の緊迫化が懸念され、原油供給が減る可能性が意識され、原油先物の代表的なものとなっているWTI先物5月限は昨年10月以来の85ドル台を付けてきた。

 もうひとつ、米国債の逆イールドが解消に向かうのではないかとの観測もある。

 米国債の2年債と10年債の逆イールドは2022年7月から続いている。しかし、ここにきて物価の落ち着きとともに、リセッション懸念も後退しつつある。次のFRBのアクションが利下げとなれば、短い期間の利回りは低下しやすくなる。

 つまりこれまで2年債の利回り以上に10年債利回りが低下していたわけだが、その反対の動きが強まることが予想される。それによって10年債への売り圧力(利回りは上昇圧力)が強まっているとの見方もできる。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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