正しい金利計算ができる15歳は4割にも満たない(2024年公開版)
金融広報中央委員会「知るぽると」では毎年の「家計の金融行動に関する世論調査」以外に、5年おきに「子どものくらしとお金に関する調査」を実施し、子供の視点からのお金に関する意識の実態を調査・確認していた。その調査は新型コロナウイルスの流行による中断を経て事実上終了してしまったが、代わりに15歳(高校1年生)を対象にした「15歳のお金とくらしに関する知識・行動調査」(※)が実施されることとなった。今回はその結果報告書を基に、15歳における金融に関するクイズの回答実情を基に、金融に関する理解度について確認をする。
たとえば「書類に記名し、印を押す」との厳密な書式を用いなくとも、例えば口頭でも法的な契約は成立しうること(裁判の場で争う場合、物的証拠が残っていないと「した」「していない」との水掛け論になるが)、「日本銀行券」の正式名から分かるようにお札は日本銀行だけが発行できること(ちなみに貨幣は造幣局が製造・政府が発行)など、大人なら大体(!?)皆が知っているような「金融に関する知識」について15歳に尋ね、その正解度合いをグラフ化したのが次の図。
物だけでなくサービスを購入した時も消費税の支払いは生じうる件は9割近くが正解者。また紙幣に関する豆知識的な話も8割以上が正しい答えを導きだしている。保険が基本的に万一の時の備えになるものであることを知り解しているのは80.5%。
為替レートの変動で日々ニュースとして持ち上げられる円高や円安といった言葉について、正しい理解をしているのは65.5%と2/3近くにとどまっているのが悩ましい。また、お世話にならないのが一番だが、万一に備えて覚えておくとよいクーリングオフの話(通信販売や、購入者が実店舗に足を運んで購入する場合は対象外)を理解している人は6割足らず。
成人してから多くの人が使うことになるクレジットカードについて、その基本的な仕組みすら理解していない15歳が多数いるのは、問題といえるかもしれない。
興味深いのは、グラフの一番下にある「100万円を年率2%の利息がつく預金口座に預け入れた。それ以外、この口座への入金や出金がなかった場合、5年後、残高はいくらになっているか(選択式)(出入金はなく、利息への税金は考慮しない)」について、複利計算の考え方を認識している人が4割にも満たないこと(選択肢は「110万円より多い」「ちょうど110万円」「110万円より少ない」「与えられた条件だけでは答えられない」「分からない」)。もっとも正しい答えを導きだせる考え方を持っていないのではなく、計算方法そのものが分からない、さらには「利息・複利」そのものを知らない、知識習得レベルでの誤答の可能性も否定できないが。
これらの知識は社会系の教科などで教えられることが多いが、専門の、たとえば「金融」「経済」といった教科は(商業系の専門学校や大学でもなければ)存在せず、学校側でも「すでに家庭で教わって知っているだろうから」との認識で、さらりと流されてしまうことが多い。一方家庭でもこれらのお金の知識について、過不足無く教えているかは、はなはだ疑問である。
幼い時から世の中で暮らしていくのに必要不可欠な「お金」に関する知識を概念的なものでよいので身につけておけば、大人になってから道を踏み誤るリスクは格段に小さくなる。それだけに、教育カリキュラムに金銭感覚を習得できるような知識、ノウハウを修得できる時間を組み込むことは、最重要課題といえる。新学習指導要領によって2022年4月から、金融教育が義務化されていることから、今後どれだけの効果があるのか、気になるところではある。
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※15歳のお金とくらしに関する知識・行動調査
2023年6月15日~7月14日に日本全国の高校1年生に対してインターネット経由で行われたもので、有効回答数は3000人。直近の国勢調査の結果を基に、15歳の地域比率にあう形で割り付けを行っている。
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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
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