日銀内部で意見の違いが明らかになりつつある
日銀は6日に9月21、22日らに開催された金融政策決定会合の議事要旨を公表した。このなかの「政策運営を巡るコミュニケーション」の部分を取り上げてみたい。
委員は、「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現が見通せる状況には至っておらず、日本銀行は粘り強く金融緩和を継続していく方針であることを伝えることが重要との認識で一致した。
これが現在の日銀の基本的見解であり、つまり金融政策は緩和方向でしか見ていないことを示している。
委員は、日本銀行は「賃金の上昇を伴う形で、2%の「物価安定の目標」を持続的・安定的に実現することを目指して」いるとしたうえで、イールドカーブ・コントロールの枠組みについて、「物価安定の目標」の安定的な実現に必要な時点まで継続すると対外公表文で約束していることを再確認した。
YCCの修正はあっても撤廃は、物価水準からさらに大幅な賃金上昇を達成するという、数値上はかなりのインフレが起きるまではありえないと宣言している。
一人の委員は、情勢判断については委員間で多様な見方があるのは当然だが、こうした政策反応関数、すなわち先行きの政策運営方針については、全員一致で議決し、公表していると指摘した。
この意見にも疑問が残る。委員会制度をとっている限り、多様な意見が議決に反映されて当然であり、政策運営方針について全員一致で議決する必要などはない。
複数の委員は、イールドカーブ・コントロールの枠組みの撤廃やマイナス金利の解除は、あくまで、2%の「物価安定の目標」の実現との関係で、その成功とセットで論じられるべきであると指摘した。
何をもって成功というのか、具体的な数値で示すべきである。本来の2%の「物価安定の目標」はあくまで消費者物価指数(除く生鮮食料品)の前年比2%であったはずだが。
一人の委員は、マイナス金利を解除するという判断は、マイナス金利よりゼロないしプラスの金利が望ましいと判断したということを意味するが、2%の「物価安定の目標」の実現が見通せないもとで、そうした判断に至ることは考えられないと付け加えた。
マイナス金利よりゼロないしプラスの金利が望ましいのは当たり前のことではないのか。
日銀の植田総裁は6日の名古屋での講演で、物価安定目標について「実現の確度が高まってきている」と発言している。
この総裁発言からみても日銀は無理矢理に全員一致で異次元緩和を続けようとの姿勢をみせているが、総裁はそういった姿勢に疑問を抱いているようにも思える。