全米女子プロで起こった「事件」スロープレー2罰打で予選落ち。ゴルフ界に残る「謎」は喫緊の課題
渋野日向子らが参戦中の女子ゴルフのメジャー大会、全米女子プロ選手権は2日目を終えて畑岡奈紗が首位と5打差の通算1オーバーで19位タイへ浮上。河本結は24位タイ、期待の渋野は13位タイから46位タイへ後退、野村敏京はカットラインぎりぎりの通算6オーバー、62位タイで、いずれも決勝進出を果たした。
その一方で、カットラインに1打及ばず予選落ちとなったチェコ共和国の25歳、クララ・スピルコバは、スロープレーによる2罰打を科され、通算5オーバーが7オーバーになり、涙を飲む結果になった。
【スロープレーで2ペナ】
日本の河本と予選2日間を同組で回っていたスピルコバは、2日目の15番を終えたところで、ルール委員からスロープレーによる2罰打を言い渡され、このホールのスコアはパーからダブルボギーに変わった。その結果、スピルコバの2日間の通算スコアは5オーバーから7オーバーに変わり、予選落ちとなった。
「スロープレーによる罰打は1ペナ」と認識されていると思うのだが、現行ルール下では複数回の警告(注:R&Aでは2度目の警告、USGAや米PGAツアーでは3度目のチェックポイント)で改善されなかった場合は2ペナ、それ以上の警告で改善れなかった場合は失格とされており、米LPGAやPGAオブ・アメリカも、これに倣っている。
とはいえ、米男子のPGAツアーでは、スロープレーに対して非公開で罰金を科したことは何度もあるものの、実際に罰打を科した例は、この20年でわずか1例(2017年)。「対応が甘すぎる」と、しばしば批判を浴びている。
一方、米女子のLPGAでは罰打を科したケースが今年だけでもすでに5例もあり、スロープレー取り締まりの姿勢は男子ツアーより格段に積極的で厳しい。
というのも、1ラウンドの所要時間は、男子のPGAツアーが平均的な状況下なら4時間30分前後であるのに対し、LPGAでは4時間50分にも及んでおり、プレーペースの問題はきわめて深刻。はびこるスロープレーを解消することは喫緊の課題なのである。
つい最近もスコティッシュ・オープンでステイシー・ルイスが同組選手たちのスロープレーぶりを激しく批判したことが大きく報じられた。最終的にルイスはその大会で優勝したからまだ良かったが、1人のスロープレーが早いペースあるいは適度なペースででプレーしている選手たちの集中力やリズムを乱すことは言うまでもない。
今大会でスピルコバと2日間とも同組だった河本は、警告が入ってプレーを急がざるを得なくなった状況を「逆に良かったのかな」と前向きに受け止めていたようで、そう受け止められたことは不幸中の幸いだったが、ともあれ、スロープレー撲滅はゴルフ界全体の課題である。
【時代は変わってもスロープレーは相変わらず】
女子ゴルフ界のレジェンド、ナンシー・ロペスは、その昔、プレーがあまりにもスローだったため、「スロー+ロペス」で「スロペス」と呼ばれていた。
彼の夫はアベレージゴルファーだが、妻にプレーペースを早めるように忠告したという。すると妻は「プロの私のプレーの仕方に口出ししないで!」と最初は激怒したそうだが、ショットしたら必ずクラブを拭いてからバッグに入れていたロペスは、その後、ショットしたらまず歩き出し、歩きながらクラブを拭くようにしたところ、「プレーペースが驚くほど早くなった」という逸話がある。
ロペスの黄金時代から40年ほどの歳月を経た今、現代のゴルフ界には選手たちの位置情報に基づいてプレーのペースをリアルタイムで計測するシステムまで開発されており、誰のプレーが早いか遅いかは一目瞭然だ。
それほど時代も時代の産物も進化しているというのに、いまなおゴルフ界のスロープレーが無くならないという現実には首を傾げずにはいられない。
しかし、その現実は「ゴルフ界の謎」などという得体の知れないものでは決してない。明らかに、選手1人1人の心がけの問題。その一言に尽きる。