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スリランカ、コロンボで大統領の辞任を求める大規模デモ。7月9日は歴史に残る日になる可能性も

にしゃんた社会学者・タレント・ダイバーシティスピーカー(多様性語り部)
7月8日、デモ隊に警察が撃ち込んだ催涙弾を投げ返している大学生(文:にしゃんた)(写真:ロイター/アフロ)

 7月9日は、スリランカの歴史に残る日になるかもしれない。現在のスリランカの商業上の首都コロンボでラージャパクシャ大統領の辞任を求める大規模デモが実施されている。さらには同じ目的で全国からコロンボに向かってデモ隊が押し寄せている。今までの中でも最大規模に膨れ上がる可能性を含んでいる。

 全国の大学生団体や多くの労働組合が中心となって呼び掛けられた今回のデモだが、特定の団体に属さない多くの国民も参加している。スリランカの全大学生を束ねる「大学間学生連合(IUSF)」は、8日に集会を開き、ゴーターバヤ・ラージャパクシャ大統領に「9日にコロンボを包囲する」というメッセージを送った。

 以前より今回の集会のことが公表されており、治安を危惧して、警察によって突然の夜間外出禁止令が出されたが、デモ隊は夜間外出禁止令を無視してコロンボにとどまった。さらには法曹界、人権団体や野党党首などは大々的に、デモ隊の活動を妨害しようと考えていた警察に対して抑制を求めた。

(7月8日の夜、スリランカの大学間学生連合の代表が大統領に対して「9日、コロンボを包囲する」と宣言)

 スリランカは、今年4月に、事実上の国家破産宣言を行った後、国民は高いインフレ率と生活必需品の不足により、ここ何カ月も厳しい生活を強いられることになった。実質的な経済破綻が明らかになったとき、国民がまず求めたのはラージャパクシャ大統領の辞任、そして当時国家予算の75%を牛耳っていた彼の一族の政界からの辞任であった。しばらくして他の一族も辞任に追い込まれたが、ラージャパクシャ氏はこれまでの責任を取ることなく、大統領の座に留まっており「失敗した大統領として去りたくない」と公言し、任期を全うする意向に変化は見られない。

(7月9日の13時過ぎのコロンボ中心部の状況)

 ラージャパクシャ氏が大統領の座への留任の策として取られたのは、ベテラン政治家のウィクラマシンハ氏を首相に任命したことだった。ただウィクラマシンハ氏は、国会において1議席しか有しておらず、その時点ですでに先行きは不安定であった。しかし、国会内部から改革を掲げて就任したウィクラマシンハ首相への期待から、デモ隊の活動も一時的に沈静化した。しかし国民の不満のガス抜きの試みとして成功したように見えた、ラージャパクシャ大統領によるウィクラマシンハ氏の首相任命と二人三脚の国家運営が長続きせず、結局は国民の怒りを鎮めるための一時的な応急処置に過ぎなかった。

 国民からの国家破産の責任に伴うラージャパクシャ一族の追放と生活の改善のへの期待とは裏腹に、結局は結果としてラージャパクシャ政権を温存させ、さらには悪化の一途をたどる国民の生活の実態を踏まえて、今回は改めて大統領の退陣を求める運動が仕切り直されたことになる。今回の動きと7月9日は、スリランカの歴史に残る可能性を大いに秘めている。

(警察官が警察バイクを停めて反政府デモに加わった)

社会学者・タレント・ダイバーシティスピーカー(多様性語り部)

羽衣国際大学 教授。博士(経済学)イギリス連邦の自治領セイロン生まれ。高校生の時に渡日、日本国籍を取得。スリランカ人、教授、タレント、随筆家、落語家、空手家、講演家、経営者、子育て父などの顔をもっており、多方面で活動中。「ミスターダイバーシティ」と言われることも。現在は主に、大学教授傍ら、メディア出演や講演活動を行う。テレビ•ラジオは情報番組のコメンテーターからバラエティまで幅広く、講演家として全国各地で「違いを楽しみ、力に変える」(多様性と包摂)をテーマとする ダイバーシティ スピーカー (多様性の語り部)として活躍。ボランティアで献血推進活動に積極的である。

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