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利下げと株価の最高値が重なる時、そのあと何が起きるのか

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 28日の米国株式市場では、主要株価指数のひとつであるS&P500種株価指数が3か月ぶりに過去最高値を更新した。米国のトランプ大統領が28日、中国との貿易協議の部分合意について、調印に向けた最終調整が計画より早く進んでいる、と述べたことなどがひとつの要因となった。また、英国のジョンソン首相が来年1月31日までの離脱期限延長を受け入れたことから合意なき離脱のリスクが後退したために、いわゆるリスクオンの動きともなっていたとみられる。このため、欧米の国債利回りは上昇していた。

 それにしても世界的な景気減速の懸念も強まるなかにあって、この株価の堅調度合いには違和感がある。そのひとつの背景に中央銀行による積極的な金融緩和がある。いわゆる過剰流動性相場と呼ばれるものだが、今回のFOMCでもFRBは予防的な利下げを行うとの観測が強まっている。米国株式市場の動向を見る限り、「予防的な」利下げを必要とは感じない。ここは見送りでも良いと思うのだが、市場ではすでに利下げは織り込んでいるので、見送りは許さじといった状況にもなっているように思われる。

 米国でのFRBの利下げと株価の最高値が同時期に起こったケースとして2007年にひとつの例がある。2007年も米国株式市場でダウ平均は過去最高値を更新していた。2008年9月のリーマンショックのきっかけとなったサブプライム・ローン問題による最初の危機は2007年に欧州で発生した。いわゆるパリバショックと呼ばれたものであるが、米国のダウ平均は2007年8月のFRBによる利下げも好感して、10月に過去最高値の14164ドルの高値をつけていた。このときもやはり違和感を覚えた記憶がある。

 むろん2007年から2008年にかけてのリーマンショックに代表される金融危機と現在の状況を比べることに無理があることは承知している。しかし、利下げと株価の最高値更新が同時に起きていることは、何かしらそこに矛盾を抱え込んでいるような気がしてならない。いずれ大きな株価の調整が起きる可能性についても備えておく必要もあるのではないかと思われる。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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