Facebook、インドネシアでドローン活用して 中小企業向けのネット接続拡大
インドネシアの副大統領モハマッド・ユスフ・カラとFacebookのCEOザッカーバーグ氏は2016年11月にペルーのリマで開かれたAPECの会合で面会を行った。インドネシア政府とFacebookはインドネシアでのインターネット接続の拡大に向けて協力していくことを明らかにした。特にインドネシアの中小企業やスタートアップをネット接続で活性化していきたいとのことだ。
スマホが普及するインドネシア、その次は
インドネシアの首都ジャカルタでは、ほとんどの人がスマホを所有しており、誰もがスマホであらゆる情報にアクセスしている。暇さえあればスマホを見ている。だが地方ではまだスマホどころかネットに接続されていない場所も多い。そのような地方も含めてインドネシアではネットの普及に注力している。さらにスマホが普及していても、インドネシア発の新たなネットを活用したサービスやプロダクト、ネットショップなどはまだ多くないので、これから成長が期待されている。
インドネシアでは現在ジョコウィ大統領政権下で「デジタルエコノミーの拡大」を掲げており、2020年までにはジャカルタだけでなく地方も含めて1,000社以上のネットを活用したスタートアップ(technopreneurs)を創出し、1,300億ドルの経済効果を生み出すことを目標としている
カラ副大統領は「ブロードバンドの普及とネット接続の拡大によってインドネシアの中小企業が活性されることを期待しており、ネットを通じての商品やマーケットの動向を中小企業でも把握できるようになり、商品の品質向上にもつながることを期待している。さらに中小企業が強い国は貧困から脱却できる」と述べている。
Facebookのドローン活用でネット接続を
カラ副大統領との会談でザッカーバーグ氏はFacebookが開発している太陽光ドローン「Aquila」によるインドネシア全土、特に地方でのネット接続拡大を提案した。
Facebookは2015年7月に僻地でのネット接続を目指して、太陽光による無人機(ドローン)の計画を明らかにしてから、約1年後に初飛行を達成した。また2016年7月には太陽光を利用して飛行するドローン「Aquila」の試験飛行をアリゾナ州ユマで実施し、成功したと発表した。まだ具体的な商用開始時期などは決まっていない。
Facebookが太陽光ドローン「Aquila」で目指しているのは、僻地でのネット接続だ。現在、世界の人口70億人のうち、Facebookによるとネットに接続できない人が約40億人で、僻地に住んでいてネットに接続できない人が約16億人いるとのこと。人口2億5,000万人以上のインドネシアでも多くは地方や僻地に住んでいる。特にジャカルタのような都市部などに住んでおり、貧しくてネットに接続できない人々は、所得が向上すればネット接続できる可能性は高いが、僻地に住んでいる人は所得が向上しても、そもそもインフラが整備されていないことから簡単にネット接続はできない。
Facebookでは、インドネシアだけでなく世界中の僻地に住んでいる人々や貧困でネットに接続できない人々にもネットに接続する環境を構築するために「Internet.org」を立ち上げて、今回のようなドローンによるネット接続や現地の通信事業者との提携によるサービス提供などを行っている。
Facebookが欲しいインドネシアの広告市場とあらゆる情報
但しFacebookは慈善事業としてこのような僻地や貧困層へのネット接続インフラを提供しているのではない。現在、全世界で17億人以上が利用しているFacebookの売上の95%以上が広告収入である。Facebookとしてはネットに接続してもらわないと、広告ビジネスは始まらない。
さらにインドネシアのように中小企業をターゲットとしたネット接続の拡大は、Facebookにとっても新たな広告主の確保につながる。インドネシア人はFacebookやTwitter、Instagramなどが大好きだから、SNSでの広告効果は大きい。
インドネシアではGoogleも気球を活用したネット接続「Project Loon」を展開しようとしていたが、現地通信事業者Telkomが反対して頓挫している。Facebookは気球でなくてドローンだ。Facebook同様に収益の柱を広告に依拠しているGoogleにとってもインドネシアという巨大市場は魅力的だ。
さらにインドネシアだけでなく、世界中の誰もが料金を気にせずにネットに接続してFacebookを利用してもらうことによって、そこから多くの情報を収集することができる。誰と友達でどのようなことに興味があり、どこにチェックインして、どのような情報発信をしているのかなどのあらゆる情報を収集することによって、適切な広告配信も可能となる。貧困層だから広告の売上としては大きな収入は期待できないかもしれないが、彼らから膨大なデータや情報を収集することできる。それら収集した莫大なデータや情報を元に人工知能を強化し、メッセンジャーのボット開発や新たな広告配信などに反映することができる。
そのためにもまず誰もがネットに接続してFacebookを利用してもらうことが重要なのだ。太陽光ドローンによる僻地でのネット接続という巨額な投資も、慈善事業ではない。Facebookにとっては、インドネシアだけでなく全世界でこれから開拓できる40億人市場に向けた重要な投資だ。
▼Facebookが開発したドローン「Aquila」の動画