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藤澤五月も驚き?パラ開会式に“メガネ先輩”。韓国「カーリング特需」に沸くのは誰とダレ?

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
藤澤五月とキム・ウンジョン(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

昨日開幕した平昌冬季パラリンピック。開幕式でサプライズとなったのは、聖火の最終点火者としてカーリング女子韓国代表の“メガネ先輩”こと、キム・ウンジョンが登場したことだろう。

韓国メディアも“メガネ先輩”の登場を大きく取り上げており、これを機に韓国における平昌パラリンピックへの関心が高まることも期待している。

というのも、平昌五輪に比べると平昌パラリンピックへの関心は低いと言わざるを得ない状況なのだ。韓国の世論調査会社リアルメーターが調査したところによると、パラリンピックの開幕日について「よくわからない」と答えた人と、間違った日にちを答えた人は合計で66.4%に上ったという。

そんな中で行われたパラリンピック開会式。

最後の聖火リレーは“共存”をテーマにして行なわれ、最終点火は2010年バンクーバー・パラリンピックで車いすカーリング銀メダリストのソ・ジュンソクと、平昌五輪カーリング銀メダリストのキム・ウンジョンが登場することで、文字通り、パラリンピックとオリンピックの“共存”となった。

それにしても五輪が閉幕した後も続いている韓国のカーリング人気は冷めることを知らない。その盛り上がりによって、さまざまな業界が“特需”に沸いていることをご存知だろうか。

眼鏡美人を凌駕する“メガネ先輩”人気

例えば、“メガネ先輩”の愛称で日本でもすっかり有名になったキム・ウンジョンがかけたメガネだ。

彼女がかけた眼鏡のフレームは、大邱(テグ)の製造業者『ファントム・オプティカル』が販売しているものだが、その売上は平昌五輪開幕前の5~6倍に急増しているという。

もともとキム・ウンジョンのSNSなどを通じてフレームのモデル名などが明らかになり、注文が殺到するようなったそうだが、すでに2万個も売れているらしい。

(参考記事:メガネを外した“メガネ先輩”が超かわいい!! 韓国カーリング女子キム・ウンジョンのSNSがスゴい!!

もともと大邱市は韓国の眼鏡フレーム製造業者の約84%が集まる“眼鏡タウン”で、韓国が海外に輸出するフレームの80%を製造していると言われるが、ここまで売れるフレームも珍しいという。

かつて日本で“メガネっ子アイドル”が流行ったように、韓国でもファッション・アイテムのひとつとして眼鏡をかける“K-POPメガネ美人”たちがネット上でしばし話題になるが、“メガネ先輩”の威力はそれ以上だ。

しかも、その宣伝力は海外にまで及んでいる。『ファントム・オプティカル』関係者が韓国メディアに答えたところによると、「五輪の影響で、中国や日本からも注文が入っている」というのだ。

韓国では、日本の藤澤五月が人気女優のパク・ボヨンに似ていると話題になったが、逆に日本からも、キム・ウンジョンのメガネを購入する人がいるというのだから、女子カーリング日韓対決が与えた影響力の大きさを感じずにはいられない。

(参考記事:韓国で人気爆発!! カーリング藤澤五月に似ているとされる人気女優パク・ボヨンとは?)

カーリング特需に沸く業界たち

カーリング特需に沸くのは眼鏡業界だけではない。流通業界もウハウハだ。

オンラインショップではストーンやブラシといったカーリング用品の売上が通常の2倍以上売れており、自宅でできるボードゲーム型のカーリングゲームに至っては前年比で売上が5倍以上に膨れ上がるなど、カーリング・ブームが大きな経済効果をもたらしている。

何よりもホクホクなのは、ニンニク業界だ。

キム・ウンジョンらカーリング韓国女子代表の面々たちの出身地である慶尚北道の義城(ウィソン)郡がニンニクの名産地であることから、彼女たちが「ガーリック・ガールズ」と呼ばれたことは日本でも報じられた通りだが、その影響で“ニクニク”が大ヒット中なのだ。

(参考記事:藤澤五月と競う“メガネ先輩”の由来は日本の漫画だった? 韓国カー女たちの素顔)

韓国のコンビニチェーン『CU』によれば、平昌五輪開催中に“義城にんにくフランクフルト”の売上は48.4%も伸びたという。

そのほか、“義城”や“ニンニク”という単語が入った商品売上は最大で50%も伸びたらしく、義城郡の役所には、にんにくを使った商品や特産品への問い合わせが殺到しているという。

人口危機にある故郷に大貢献

人口が5万3000人に過ぎず高齢化が進み、昨年には韓国雇用情報院が選定した「30年以内になくなる可能性がもっとも高い自治体10カ所」でワースト1位に入っていた義城郡にとっては、地域の知名度とブランド力を高める大きなきっかけになったといえるだろう。

藤澤五月ら女子日本代表の影響で、チームの地元・北見へのふるさと納税が急増しているとの報道も出ているが、韓国のカーリング娘たちも地元に大貢献しているわけだ。

眼鏡業界、流通業界、ニンニク業界(?)をも潤す韓国の“カーリング特需”。それだけに最近は、キム・ウンギョンらカーリング韓国女子代表へのラブコールも絶えない。

3月7日にLG電子の掃除機の広告モデルに抜擢されたことは以前紹介したが、翌8日にはロッテフードが販売する『義城にんにくハム』の広告モデルにも抜擢された。

その人気は今や並み居る“韓国CMクイーン”たちにも迫る勢いでもある。

日韓戦がカーリング人気を決定づけたきっかけとなっただけに、一部の韓国ファンの間では、「女子韓国代表と日本代表が一緒にCMに出てほしい」との声まで挙がっているほどだ。

いずれにしても、平昌五輪で火がついたカーリング・ブームによって、韓国では「ホクホク顔」の人々が増えていることだけは間違いない。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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