Yahoo!ニュース

「北朝鮮からの弾薬輸送路を爆破」ウクライナの武装組織

高英起デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト
ウクライナでロシア軍が使用した北朝鮮製ミサイルの残骸(写真:ロイター/アフロ)

ウクライナの英字メディアであるキーウ・ポストは今月5日、北朝鮮からの弾薬の輸送路になっているロシア領内の鉄道を爆破したとする、ウクライナの武装パルチザンの発表を報じた。

この武装パルチザンはウクライナ語で「火」を意味する「Атеш(アテシュ)」の名で知られる組織で、ロシアの占領下にあるウクライナ領やロシア領内で活動しているという。

報道によれば、破壊工作を行ったのはロシア人の協力者で、ウクライナから約1600キロ離れたロシアの都市エカテリンブルク近郊で、鉄道の一部区間を爆破したという。同組織がテレグラムで公開した映像は不鮮明だが、破裂音とともに鉄道から黒煙が立ち上る場面が収められている。

映像を見たところ、爆発は小規模で致命的なものではないと見られる。しかし北朝鮮とロシアの軍事協力が深まるほど、そのルートを破壊したいというウクライナ側の欲求は強まるはずであり、それが顕在化すればこうした行動が増大するかもしれない。

また、プーチン大統領は北朝鮮への派兵要請を否定したものの、北朝鮮がウクライナ東部に工兵部隊あるいは労働者を派遣するとの見方は消えていない。

一方、韓国政府はロシアと北朝鮮が有事の際の軍事的な支援などを明記した新たな条約を締結したことを受けて、これまで行ってこなかったウクライナへの殺傷兵器の支援を「解禁」する可能性を示唆している。

(参考記事:【目撃談】北朝鮮ミサイル工場「1000人死亡」爆発事故の阿鼻叫喚

東西冷戦期からの重厚長大型の軍需産業を今なお維持する韓国の供給力は、ウクライナには強い味方に、ロシアには悪夢をもたらす可能性もある。

遠くヨーロッパで上がった火の手が、いよいよアジアにも現実のものとして迫っているのかもしれない。

デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)『金正恩核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)『北朝鮮ポップスの世界』(共著)(花伝社)など。YouTube「高英起チャンネル」でも独自情報を発信中。

高英起の最近の記事