金融政策の正常化への地均しが意識され、3月の日銀決定会合でマイナス金利解除の可能性が高まる
31日に公表された1月22日、23日に開催された日銀の金融政策決定会合における主な意見を確認する限り、次回の3月18日、19日に開催される決定会合で、マイナス金利政策の解除などの政策修正が決定される可能性が高まったとみざるを得ない。
注目すべきは「金融政策運営に関する意見」である。
「現時点では、「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現を見通せる状況には、なお至っておらず、イールドカーブ・コントロールのもとで、粘り強く金融緩和を継続する必要がある。この先、賃金と物価の好循環を確認し、目標の実現が見通せる状況に至れば、マイナス金利を含む大規模金融緩和策の継続の是非を検討していくことになると考えている。」
総裁の意見であろう。1月の会合で政策修正をしなかったのは、まだ物価目標の実現を見通せる状況には至っていないという理由を述べたあと、「マイナス金利を含む大規模金融緩和策の継続の是非を検討していく」とある。
「2%の「物価安定の目標」を実現するためには、賃金が2%を明確に上回る状況が継続するとともに、賃金と物価の好循環が一段と強まっていくことが必要である。」
政策修正について触れていない。これはリフレ派の安達委員、もしくは慎重な意見を入れる必要もあるとして内田副総裁の意見の可能性もある。
「経済・物価情勢が全体として改善傾向にあることを踏まえると、マイナス金利解除を含めた政策修正の要件は満されつつあると考えられる。」
これは氷見野副総裁あたりからの意見か。
「2%の「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現の確からしさについて、具体的な経済指標を確認することで見極めていく段階に入ったと考えられる。」
野口委員、中川委員、高田委員など、執行部の意見を重視している委員からの発言か。
「能登半島地震の影響を今後1~2か月程度フォローし、マクロ経済への影響を確認できれば、金融正常化が可能な状況に至ったと判断できる可能性が高い。」
これも上記のなかの委員の発言か。1~2か月程度のフォローであれば、3月19日も圏内に入るであろう。
「2%の「物価安定の目標」の実現が十分な確度をもって見通せる状況ではないものの、物価安定目標の達成が現実味を帯びてもきているため、出口についての議論を本格化させていくことが必要である。」
十分な確度をもって見通せる状況ではないとしているあたり、安達委員か中村委員の発言か。
「マイナス金利やイールドカーブ・コントロールの枠組みの解除についての基本的な考え方を、各時点で可能な範囲で少しずつ、対外説明していくことは、有益である。」
田村委員であろうか。
「現時点での経済・物価見通しを前提とすると、先行きマイナス金利の解除等を実施したとしても、緩和的な金融環境は維持される可能性が高い。」
内田副総裁か執行部に近い委員の発言であろう。マイナス金利政策からゼロ金利政策となっても、金融緩和策であることに代わりはない。
「出口以降の金利パスについてあらかじめ見極めることは難しく、その時々の経済・物価・金融情勢に応じて考えていかざるを得ない。」
この発言者は誰であろうか。執行部に近い委員の発言のようにも考えられるが、実際には事務方執行部が念入りなプランはすでに作成していることが予想される。
「どのような順番で政策変更を進めていくかはその時の経済・物価・金融情勢次第だが、副作用の大きいものから修正していくのが基本である。」
ひとまずマイナス金利は止めておくということであろうか。
「従来のきわめて強い金融緩和からの調整を検討していく重要な局面である。その際、イールドカーブ・コントロールやマイナス金利政策の在り方を議論するほか、オーバーシュート型コミットメントの検討も必要である。」
こちらが、もしくはこちらも田村委員の発言かもしれない。
「ETFとJ-REITの買入れについては、大規模緩和の一環として実施してきたものであり、2%目標の持続的・安定的な実現が見通せるようになれば、買入れをやめるのが自然である。」
ずいぶんと正常化に向けて積極的な発言が多くみられる。
「賃金上昇を伴う物価上昇を持続的なものにするには、コア事業強化による企業の稼ぐ力の向上と顧客満足度の向上のための人材価値を高める経営が必要であり、それらの進捗に注目したデータに基づいた判断が重要である。」
慎重意見だが、今回は少数派となっている。安達委員か。
「経済・物価情勢に応じて、金融正常化の道のりをゆっくりと進めていくためには、金融正常化の第一歩であるマイナス金利の解除に、適切なタイミングで踏み切る必要がある。判断が遅れた場合、2%目標の実現を損なうリスクや急激な金融引き締めが必要となるリスクがある。」
氷見野副総裁か田村委員、もしくは植田総裁かもしれない。金融正常化は別にゆっくり進めなくても良いかと思うが。
「海外の金融政策転換で政策の自由度が低下することもあり得る。現在は千載一遇の状況にあり、現行の政策を継続した場合、海外を中心とする次の回復局面まで副作用が継続する点も考慮に入れた政策判断が必要である。」
現在は千載一遇の状況にありとの指摘、興味深い。千載一遇のチャンスは以前にもあったはずだが、それを逃してしまって債券市場の機能が低下してしまった、これは誰の意見であろうか。
以上の意見を見る限りにおいて、マイナ金利解除に向けてかなり前向きの姿勢となっていることが窺える。これによって4月まで待たずに3月の会合で、マイナス金利政策を解除する可能性はかなり高まったといえるのではなかろうか。反対者が出たとしても1人か2人となろう。
それにしてもこの様変わりはどうした、ともいえるものであった。やはり1月の全員一致での現状維持は無理矢理でなく、3月の解除を見越した納得の全員一致であったようだ。
その要因として1月の支店長会議で企業の賃金・価格設定行動について前向きな報告があったためとの指摘があった。たしかにそれも大きいと思うが、12月の決定会合後の総裁会見の違和感なども考慮すると、安倍派の解散なども影響していた可能性もあろう。