ニュージーランドから宇宙へ。ロケット・ラボ、超小型衛星専用打ち上げに成功
2018年11月11日、ニュージーランドに拠点を持つロケット企業、Rocket Lab(ロケット・ラボ)は初の商業打ち上げに成功した。企業や高校生が開発した7機の超小型衛星によるライドシェア(相乗り)となり、ニュージーランド北島のマヒア半島にある同社の専用射場から、衛星は高度500キロメートルの軌道に投入された。上昇中のロケットから届いた映像では、眼下にニュージーランドの大地がくっきりと見える。
ElectronロケットIt's Business Timeの打ち上げ映像。
ロケット・ラボ社は、2006年にピーター・ベックCEOが設立したロケット企業。Electron(エレクトロン)と呼ばれる全長17メートルの2段式ロケットにより、キューブサットと呼ばれる超小型衛星、または150キログラムまでの小型衛星を太陽同期軌道に投入できる。ニュージーランド出身の物理学者アーネスト・ラザフォードにちなんで名付けられた“ラザフォード”エンジンは、液体酸素/ケロシンを使用し、電動式の推進剤ポンプと3Dプリンティングによる製造技術を採用している。
「It's Business Time」と名付けられた今回の打ち上げは、ビジネスタイムという言葉通りロケット・ラボの商業初打ち上げとなる。Electronロケットでは3度目の打ち上げで、2018年1月の試験打ち上げに続いて、軌道への到達は2度目の成功となった。
搭載された超小型衛星は、Spire Global(スパイア・グローバル)社による船舶自動識別装置:AISとGPS電波を利用した気象観測の機能を併せ持つLemur-2衛星が2機、超小型衛星開発企業Tyvak Nano-Satellite Systemsによる実験機、オーストラリアのFleet Space TechnologiesによるIoT衛星Proximaが2機、High Performance Space Structure Systems GmBH (HPS GmbH)社によるスペースデブリ対策技術実証衛星NABEO、カリフォルニア州の6つの高校が参加する学生キューブサット開発プログラムによるIRVINE01の全7機となる。
ニュージーランドの現地時間11月11日午後4時50分に行われた打ち上げでは、快晴の条件の元でElectronロケットは順調に上昇。予定通り第1段と第2段、フェアリングを切り離し、衛星を軌道に投入するキックステージの分離も順調だった。今後、連続して打ち上げを実施する予定で、12月には次の打ち上げが予定されている。衛星の打ち上げ価格は、1.3キログラムの1Uキューブサットをライドシェアで打ち上げる場合は8万米ドル(約9100万円)となる。
2018年10月には、ニュージーランド北島のオークランドにロケット機体の製造拠点を開設した。またマヒア半島の射点に続いて、2019年には北米でNASAが運用するヴァージニア州のワロップス飛行施設内に第2の射点を開設し、主にNASAからの依頼による衛星打ち上げを開始する予定だ。また、イギリス政府がスコットランドに開設する計画を進めている衛星打ち上げ施設にロケット機体を提供するともいわれている。
ロケット・ラボは今回の打ち上げが成功したことで、“マイクロランチャー”と呼ばれる超小型衛星専用のロケットとしてこの分野をリードしていることを実証した。今後は、高頻度の打ち上げに向けて事業を加速させていくとみられる。