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優勝候補の筆頭はT・ウッズ!?間もなく開幕する全米プロの勝利の行方を占う

舩越園子ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授
マスターズ以来の試合出場。「いい感じ」と笑顔を見せたウッズだが、懸念もある(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 間もなく、今季2つ目のメジャー大会、全米プロゴルフ選手権(5月16日~19日)が開幕する。戦いの舞台はニューヨーク州ロングアイランドのべスページ・ブラックコースだ。

 べスページは2002年と2009年に全米オープンの舞台になったムニシパル(市営)コースだが、全米プロが開催されるのは今回が初めてだ。7459ヤード、パー70と距離的にきわめてタフである上、アップダウンも多く、高低差を含めた距離の判断が何より難しい。そこに海からの風が吹きつければ、難度はさらにアップし、悪天候が加われば、その難しさは一層アップする。

 開幕前週に米CBSスポーツが発表した優勝予想は、1位がローリー・マキロイ(北アイルランド)、2位がタイガー・ウッズ(米)、3位がブルックス・ケプカ(米)だった。

 だが、米ゴルフメディアは、こぞって優勝予想の筆頭にケプカの名を挙げた。その理由は「同大会のディフェンディングチャンピオンであること」「昨年の全米オープンと全米プロを制し、今年のマスターズでは2位タイと、メジャー大会にめっぽう強いこと」「前週のAT&Tバイロン・ネルソン4位と好調であること」だった。

【ウッズ、笑顔の後に驚きのニュース】

 とはいえ、好調の波という意味では、ウッズのほうがむしろ上だと言える。ウッズは昨年9月の最終戦、ツアー選手権で5年半ぶりの復活優勝を遂げ、今年4月のマスターズもケプカを抑えて優勝したのだから、上り調子で勢いがあるのは、むしろウッズのほうである。

 さらにウッズは、今月6日に栄えある大統領自由勲章を授与され、満足感や達成感、大きな喜びを噛み締めたばかりだ。そんな精神面の充足も、彼のゴルフのプラスになりうる要素と言えるだろう。

 それでも米メディアがウッズを優勝候補の筆頭に挙げなかった理由は、ウッズの肉体とスタミナの限界を憂慮しているからだ。4度にわたる手術を経た膝と腰は、完治しているとはいえ、いまなお無理は禁物だ。ウッズ自身、手術以降は「練習は量より質にせざるを得ない」と言い続けている。

 そんな中、ウッズはマスターズ優勝後の試合出場をすべて見合わせてオフを取り、いきなり今週の全米プロ出場となったため、ウッズの肉体を危ぶむ見方が強まっていた。

 しかし、13日の月曜日、早々に現地入りしたウッズは「いい感じだ。自宅(近くのコース)で4日間プレーしてきたから準備万端だ」と明るい笑顔。相棒キャディのジョー・ラカバも「タイガーには休養こそが必要だった。今は体もゴルフも、とてもいい状態。とりわけショートゲームがいい感じ」とボスの仕上がりに太鼓判を押していた。

 

 その直後、驚きのニュースが飛び込んだ。昨年12月、ウッズが経営するレストラン「ザ・ウッズ」のバーテンダーだった24歳の男性が、レストランで飲酒を続け、泥酔状態で車を運転し、事故死した。その男性の両親が、ウッズとレストランのマネージャーでありウッズの恋人でもあるエリカ・ハーマンの責任を問い、訴訟を起こした。

 14日の会見で訴訟について問われたウッズは「とても悲しかった。とても気の毒に思う」とコメントしている。この出来事が、これから大会に挑むウッズのメンタル面や彼のゴルフにどんな影響を及ぼすのか、及ぼさないのかは、蓋を開けてみるまで、おそらくウッズ本人にもわからない。

【ウッズが優勝予想1位へ】

 ケプカやウッズに注目が集まる傍らで、黙々と勝利を狙っているのは、世界ランキング1位のダスティン・ジョンソンだ。

 

 屈指のロングヒッターとして知られるジョンソンだが、自身が武器と感じているのは、むしろパットだ。一時期はそのパットが不調に陥り、苦悩していたが、2016年に全米オープンを制して以来、パットの感触と自信を取り戻し、ずっと好調さを維持しているからこそ、世界ナンバー1の座を保持できている。

 

 べスページで練習ラウンドしたジョンソンは「グリーンの転がりは、とても素晴らしい。このコースは僕のためにセッティングされているようなものだ」と、静かに自信を示している。

 

 全米プロ開幕が半日後に迫る中、米CBSスポーツが発表した最終の優勝予想では、順位が入れ替わり、ついにウッズが1位に浮上した。ウッズ優勝のオッズは8倍。「勝つためにはドライバーショットがカギになる」とウッズ。勝てば、年間グランドスラム達成に必要な道程の半分がコンプリートされることになる。

 優勝予想2位はジョンソンとケプカで、オッズは10倍。マキロイは12倍で4位へ後退。松山英樹のオッズは40倍だ。

 大会を主催するPGAオブ・アメリカは、ひとたび試合が開幕したら、以後はコース設定に関する人為的な操作は極力抑え、「風と天気次第。フェアなテストになるようなコースセッティングをしたい」と語り、勝敗の行方は大自然に委ねる姿勢だ。

 果たして、マザーネイチャーは誰をチャンピオンに選び出すのだろうか。初日のティオフが待ち遠しくて、たまらない。

ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て1989年に独立。1993年渡米後、25年間、在米ゴルフジャーナリストとして米ツアー選手と直に接しながら米国ゴルフの魅力を発信。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。2019年からは日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして多数の連載を持ち、執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、武蔵丘短期大学客員教授など活動範囲を広げている。ラジオ番組「舩越園子のゴルフコラム」四国放送、栃木放送、新潟放送、長崎放送などでネット中。GTPA(日本ゴルフトーナメント振興協会)理事。著書訳書多数。

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