Yahoo!ニュース

[訃報]コンテンポラリー・ジャズのパイオニア的存在 ジョージ・デュークさん逝去

富澤えいち音楽ライター/ジャズ評論家

1970年代から数々の名バンドで実力を発揮して、コンテンポラリー・ジャズ界を牽引したピアノ&キーボード奏者のジョージ・デュークさんが亡くなられました。

ジョージ・デューク『Dreamweaver』(2013年リリース)ジャケット写真
ジョージ・デューク『Dreamweaver』(2013年リリース)ジャケット写真

月曜日(8月5日)、ジャズ・ピアニストのパイオニア的存在、ジョージ・デュークが、LAの病院で亡くなった。慢性リンパ球性白血病を患っていたと伝えられている。67歳だった。

出典:ジャズ・ピアニストのジョージ・デューク、死去|BARKS

お話しする機会のないままアチラの世界へと旅立たれてしまって、とても残念です。

ジョージ・デュークさんといえば、ジャズとフュージョン、そしてファンクやプログレッシヴ・ロックといったジャンルを、持ち前の超絶技巧で縦横無尽に行き来して、極上のエンタテインメントに仕立ててしまうことのできる、トップ・クラスの“サウンド・シェフ”というイメージをボクはもっていました。包丁さばきや味付けはもちろん、盛りつけの美しさもピカイチという意味での“シェフ”という例えですので、念のため。

ボクのなかでジョージ・デュークさんが強く印象に残ったのは、ソニー・ロリンズが1977年にリリースした『イージー・リヴィング』でのプレイ。とくにA面(購入当時はアナログLP盤だったんです)の1曲目「イズント・シー・ラヴリー」の出だしでスタッカートするエレクトリック・ピアノの音は、オリジナルであるスティーヴィー・ワンダーのヴァージョンをさらに魅力的に彩った珠玉の名サポートであると吹聴し続けていくつもりです。

♪Sonny Rollins- Isn't She Lovely?

♪Jean-Luc Ponty- King Kong: Jean-Luc Ponty Plays The Music Of Frank Zappa

エレクトリック・ヴァイオリンを駆使して1970年代にフュージョン旋風を巻き起こしたジャン=リュック・ポンティの1970年の作品で、フランク・ザッパも参加したザッパ作品集。このような複雑怪奇なサウンドを正確無比のテクニックで抒情的に表現したことによって、“ジョージ・デューク”という名は一気に高まっていったのですね。

ご冥福をお祈りします。

音楽ライター/ジャズ評論家

東京生まれ。学生時代に専門誌「ジャズライフ」などでライター活動を開始、ミュージシャンのインタビューやライヴ取材に明け暮れる。専門誌以外にもファッション誌や一般情報誌のジャズ企画で構成や執筆を担当するなど、トレンドとしてのジャズの紹介や分析にも数多く関わる。2004年『ジャズを読む事典』(NHK出版生活人新書)、2012年『頑張らないジャズの聴き方』(ヤマハミュージックメディア)、を上梓。2012年からYahoo!ニュース個人のオーサーとして記事を提供中。2022年文庫版『ジャズの聴き方を見つける本』(ヤマハミュージックHD)。

富澤えいちの最近の記事