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南米・旧統一教会敷地内の不穏な滑走路爆破ニュース 今も続く、教祖提唱のニューホープファーム宣言の影響

多田文明詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

教団が購入した南米パラグアイの土地に関する、きな臭いニュースが飛び込んできました。

旧統一教会敷地内の麻薬輸送滑走路を爆破=国際犯罪組織が利用、教会関与の疑い

(ブラジル日報)

文鮮明教祖が提唱するニューホープファーム宣言

1995年4月3日に文鮮明教祖は「ニューホープファーム(新しい希望農場)宣言」を出しました。筆者が教団を脱会する前年に、この宣言を耳にしています。

これは、南米のウルグアイ、パラグアイ、ブラジルにまたがる広大な土地を旧統一教会が購入して、神様が本来創造したかった、新しいエデンの園を作ろうとするものでした。この地に地上天国を作るという構想に、当時、多くの信者の心は躍ったものです。

南米の摂理ともいわれて、文鮮明教祖の号令のもと、翌年にはたくさんの日本人の女性信者たちがこの地を訪れました。取材のなかでは、児童である2世を家において、母親が南米に行ってしまったケースもありました。当時、そのような経験をした子供たちは多かったのではないかと思います。

特に教団は、ウルグアイのホテルを買い取り、銀行の経営権を手に入れるなど、かなりの資金をつぎこんで、この国に力を入れていたとも聞いています。

またパラグアイのチャコ地域のレダに旧統一教会は広大な土地を購入して、文教祖の指示で多くの信者らが2000年前後にやってきて、この地の開拓をしてきました。しかしこの場所の暑さは半端ではなく、電気もなく、家にいても雨水が洩れてくるような劣悪な住環境で、開拓は容易なことでなかったはずです。

本当に多くの信者たちが苦労したと思います。

南北米福地開発協会HPによると、文教祖はパラグアイの北部「プエルト・レダ」の土地8万ヘクタールを準備して「日陽園」と命名し、開発を行う組織に「南北米福地開発協会」と名付けて、1999年9月から「レダ・プロジェクト」として20年以上開発を進めているということです。

今も、レダツアーやレダプログラムで、信者らを募る

現地のスタッフら(おそらく1世信者)が、高齢になってきたということでしょう。最近、教団は、青年学生、家庭青年、壮年壮婦といった、2世などの若い信者らに向けて「レダで奉仕活動をしてみたい方、レダの事業に関心がある方、南米でのツアーや人と環境とが共存する社会づくりに関心のある方はぜひご参加ください」とこの地への体験ツアーなどを募集するメッセージを送っています。

ここでの活動には、魚の養殖体験、学校での奉仕活動、植樹活動、釣り体験などがあげられており、「8カ月~11カ月の長期ボランティア」もあるようで、これを希望する人は「南北米福地開発協会」に連絡をするようになっています。費用は一般の方が10万円(学生7万円)で、募集には「今回は真の父母様が願われる平和運動への取組みとして参加者支援制度が組まれました」との文字もみられます。

この地をめぐる不穏なニュース

しかしこの地をめぐる不穏なニュースがありました。

ブラジル日報によると、昨年、南米パラグアイの北部のチャコ地域で、地元警察が麻薬取締りのために、旧統一教会の敷地内の麻薬輸送の滑走路を爆破したというのです。

記事には「複数の違法滑走路が旧統一教会所有の敷地内にあったことが判明した」とあり、この地域は麻薬密売を行う国際的犯罪組織による支配が拡大しているところで「同教会の麻薬密売への関与が疑われている」とのことです。

しかし今のところ「旧統一教会やそのメンバーが麻薬密売に関与している証拠は見つかっていない」ということで、教団側の弁護士は「我々は違法行為には一切関与していない」と強調しています。いずれにしても、現地警察の捜査の進展が待たれるところです。

危険な場所である認識を

それにしても、滑走路爆破により、日本人の信者らに死傷者が出なかったのはよかったですが、今も気軽な感じでツアーなどを企画募集していますが、ここは非常に危険な土地であることを認識すべきかと思います。

さらに記事には、麻薬は密売人たちを通じてボリビアやペルーから空輸されて、ブラジル、ウルグアイ、アルゼンチンへ陸路や水路で運ばれ、ヨーロッパ行きの船に積み込む方法を行っているともあり、もし旧統一教会の敷地内の滑走路が麻薬の輸送に使われたことが事実とすれば、麻薬の密輸ロードに手を貸していたことにもなりかねず、文教祖が掲げる世界平和や希望農場などという、新エデンの園からは、ほど遠い姿といえます。

若い世代は、理想と希望だけを抱いて、教団の活動に邁進してしまいがちです。しかし病院も近くにないと思われるこの地で、信仰心だけをもって活動し続けることはとても危ないと考えています。

宗教2世のなかには、安倍元首相銃撃事件以降に一連の報道があるまで、過去に教団が高額献金をしていた実態を知らない人もいました。教団は不都合な事実をしっかりと伝えないところがあり、信者の身を危険にさらす可能性があります。

この破壊は、昨年7月のことですので、現地ではすでに知られていたことだと思います。ここが麻薬の輸送地となるような危険な土地だとすれば、ボランティアとはいえども、募集の際には、隠すことなく現地の危険事情を明記すべきだと思います。

土地購入の資金の流れの解明も必要

何より、南米の土地購入には、日本の信者らの献金が多く使われているはずです。この地には、過去多くの日本の教団幹部らも赴いているという話もありますので、旧統一教会がかかわっていない事業とはいえないはずです。日本から、どのようにしてお金が流れて、広大な土地が購入されたのか。

文化庁による旧統一教会の解散命令請求は近いと考えていますので、今後の裁判のなかで、海外への資金の流れを教団側は明らかにすべきであると考えています。こうした資金の流れは、解散命令を判断する上での重要なポイントの一つになると考えています。

詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト

2001年~02年まで、誘われたらついていく雑誌連載を担当。潜入は100ヶ所以上。20年の取材経験から、あらゆる詐欺・悪質商法の実態に精通。「ついていったらこうなった」(彩図社)は番組化し、特番で第8弾まで放送。多数のテレビ番組に出演している。 旧統一教会の元信者だった経験をもとに、教団の問題だけでなく世の中で行われる騙しの手口をいち早く見抜き、被害防止のための講演、講座も行う。2017年~2018年に消費者庁「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会」の委員を務める。近著に『信じる者は、ダマされる。~元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』(清談社Publico)

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